服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第818回
佳い顔の持ち主になるために

自分の顔は好きですか。
毎朝、自分で自分の顔を映してみる。
その時、自分の顔をどう思うか。
でも、これは単に美しい顔かどうか、
という問題ではありません。

たとえば自他ともに認める、
天下一品の美男子がいたとしましょう。
彼が毎朝顔を見て、
好きだと思うかどうか。
案外、「どうして俺はこんな整いすぎた顔なのか」
と思うかも知れないではないですか。

私がここで言いたいのは、
「佳(い)い顔」であるかどうか。
もちろん私も「佳い顔」でありたい。
相手の顔を見る時にも、
「佳い顔」には魅力を感じる。
では、「佳い顔」とは何か。
よく名脇役などを形容する際、
「佳い顔してるよなあ」と言う。
その「佳い顔」のことです。

俗に、目鼻立ちと申しますが、
これが整っているのが美男子、ハンサムであります。
一方、「佳い顔」とは単に
かたちだけの問題ではない。
かたちの裏にこころの美しさが感じられる顔
とでも言えば良いでしょうか。
つまりこころのあり様(よう)を
的確に、敏感に、優雅に
反応させ得る顔ということでしょう。

たとえば部長が机に座っているとしよう。
隣に秘書がいる。
秘書が部長の顔を見て、
「あ、今、珈琲が飲みたいんだな」と感じる。
これは「佳い顔」なんです。
こころの動きが顔にあらわれる。
まことに人間的な構造であるからです。
正直であり、素直な人間性からでしょう。
つまり佳い顔であるためには
良い人間でなければなりません。

世はすべて喜怒哀楽で成立っています。
このうち大切なことは「喜」と「楽」。
「怒」と「哀」は
なるべく心の底にしまっておく。
そして「喜」と「楽」とには大いに反応する。
心のなかで「うれしいなあ」と大いに喜ぶ。
「すばらしいなあ」と大いに楽しむ。
と、その「喜」と「楽」の感情は
たちまちにして顔に伝えられる。
こうして「佳い顔」が生まれるのです。
女は美人、男は佳顔(けいがん)に限る。
もっとも「佳顔」なんて言葉があるかどうか、
私は知りませんが。


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