服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第819回
ショッピングの裏道

ショッピングはお好きですか。
女性でショッピングが嫌い、
という人はまずいません。
でも男性の場合、
好きと嫌いがはっきり分れるようです。
嫌いであることの理由は、「面倒くさい」。
私はもちろん大好きです。
もう少し正確にいえば、
ウインドー・ショッピングが大好き。
見て、歩くのが好き。
まあ、これも暇人の特権でしょう。

たとえば神戸には
「モトコー」があります。
正しくは元町高架下商店街というのでしょうが、
略して「モトコー」。
いわゆるガード下であります。
これが三宮から元町、元町から神戸へと、
えんえん続いているのです。
東京でいえば
「アメ横」に似ているかも知れません。
でも「アメ横」のように拡がってはいなくて、
ただただ長いのです。
ゆっくりと歩くには最適です。

私はこの「モトコー」を歩くのが好きで、
神戸へ行ったら必ず寄ってみたくなります。
雑貨、放出店、古本・・・
珍しいものがいっぱいあります。
ないのは高額商品くらいのものでしょう。
全体に安い。
安いうえに、値段交渉可。
その意味では外国のノミの市にも似ています。

見て、触って、吟味して・・・。
買物好きの私にとって
これほど楽しいことはありません。
でも、これはただ楽しいだけでなく、
おしゃれのレッスンでもあるのです。
良いものとそうでないものとを
見極める眼を育ててくれるのです。
おしゃれ上手はウインドー・ショッピングからはじまる、
と言って過言ではありません。

この間も淡いグレイのドレス・ヴェストが
格安の値段で並んでいました。
と、私としては生地が何であるか、
縫製はどうであるか、格安の理由は何なのか・・・。
瞬時のうちに判断しなくてはなりません。
これがおしゃれのうえでは大いに勉強になるのです。
そこにはスリルもリスクもあるかも知れません。
だからこそ心地良い緊張感が生まれるのでしょう。
眼を磨き、センスを磨き、
歩くことでスリムになるとしたら、
当分、裏道ショッピングは
やめられそうにありません。


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