服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第839回
レッドソックス・ハッピネス

レイモン・サヴィニャックを知っていますか。
フランスの画家。
より正確にはポスター作家として
活躍したアーティスト。
レイモン・サヴィニャック(1907〜2002年)については
『芸術新潮』6月号で特集していますから、
ご興味おありの方は開いてみて下さい。
シトロエンやルノー、
あるいはダンロップのポスターなども手がけています。

さて『芸術新潮』の特集を見ると、
サヴィニャック自身の写真が揚げられています。
1997年、トゥルーヴィルの自宅で撮られた写真。
この時、たしかサヴィニャック
90歳になっていたはずですが、
赤のタートルネック・スェーターを着ているのです。
それもどうも朱赤のような色であるらしい。
いいなあ、私もいくつになっても
こんな鮮やかな色が似合う男でありたいなあ。

でも、もっとよく見てゆくと、
黒い靴に赤い靴下を履いているではありませんか。
しかもそれは真紅であるように思われます。
真紅の靴下。
ふだん私がぼんやり考えていることが、
実証されているような気がして
とても嬉しくなってしまったのです。
<いつも赤い靴下を履いている男は年を取らない>
という空想。
サヴィニャックは95歳で世を去っています。
まずは天寿まっとうと言って良いでしょう。

赤い靴下と長寿、
いったい何の因果関係があるのか。
もちろん私にもよく分りません。
でも、こんな小さな、ささいな部分にも、
なにか自分なりの好みを反映させようとする気持が、
たぶんプラスに働くのでしょう。
赤い靴下を選び、履くという積極性が
心を活性化させる効果があると思います。

西洋でもむかしから
赤い下着は病気にかからない、
という言い伝えがありました。
が、これは単なる迷信とばかり
片づけられないのではないでしょうか。
私はまだ真紅のトランクスを
履いたことはありません。
でも、それがその人の心に火を点し、
身心を元気づけてくれるのなら、
それも良いのではないでしょうか。
第一、真紅の靴下も下着も
誰に迷惑かけるわけでもないのですから。


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