服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第851回
心を明るくする1本の傘

“ガンプ”という言葉を知っていますか。
“ガンプ”gamp は英語、ことにイギリス英語です。
その意味は「こうもりがさ」。
ではどうして傘のことを“ガンプ”と呼ぶのか。
ディケンズの小説
『マーティン・チャズルウィット』に登場する助産婦、
サラー・ガンプがいつも太い、
不恰好なこうもり傘を持つところから、
その名で呼ばれるのです。
登場人物の名前から一般名称が生まれた一例でしょう。
このことを裏返すなら、
いつも持っている傘で、
その人の印象が決定されることもあるわけです。
さて、もっとも私らしい傘とは、
いったいどんなものでしょうか。

傘についてもっとも大切だと思うのは、長さ。
というのは傘を巻いた状態で右手に持った場合、
短すぎても長すぎても、困る。
自分の身長や手の長さとの釣り合いによって、
より美しくなるからです。
つまり理想の傘とは
まるで注文したステッキであるかのように
バランスが良く、
扱いやすい代物ではないでしょうか。

さて、その次はやはり太さでしょう。
“ガンプ”(太い、不恰好なこうもり傘)は
避けましょう。
適度に細巻きの傘。
だからといって細ければ細いほど良い
というものでもありません。
まあ、常識的には8本骨が基準でしょう。
12本、16本というのもありますが、
丈夫である反面、重く、太くなります。
あるいはその上に張るカノピー(布地)によっても
異なってくるでしょう。
薄い生地ほどより細く巻けるのは当然。
けれども傘としての機能性も大切ですから、
過ぎたるは及ばざるがごとし。

おしゃれの要素としては
ハンドル(手もと)の材質があります。
シルヴァーやアイヴォリー、あるいは革巻き。
もちろん伝統的な素材としては
マラッカがあります。
露先(つゆさき)「傘骨の先端」を
留めておくためのリングの材質をどうするか。―
自分好みの傘を注文するのは、
なかなか愉しい作業です。
予算としてはざっと1本、2万5千円位。
「丸善」(TEL:3273-3316)で
相談に乗ってもらうことも可能です。


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