服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第873回
おしゃれとは創造の美学です

シャツにアイロンをかけたことがありますか。
これはもう何度かお話していることですが
シャツにアイロンをかけるのは
それほど難しいものではありません。
ハンカチにアイロンをかけることが出来るなら、
誰にだって簡単です。
要は慣れることでしょう。
コットンのシャツであろうと
リネンのシャツであろうと、
霧吹きを適量使うことによって、
ほぼ思い通りに仕上げられるはずです。

手順としては、難しい個所からはじめる。
たとえば肩ヨークの部分。
これは裏側からアイロンを動かしていけば
楽々とシワが伸びる。
次に前立て部分、カフス、袖、襟・・・
と進めてゆきましょう。
襟やカフスについては、まず表側からはじめて、
必ず外側から内側へとアイロンを動かす。
これは原則です。
私の場合、1枚につき15分で仕上ります。
2枚で30分。
原稿を書くのと少し似ているかも知れません。

それはさておき、
シャツのアイロンがけが
自分で出来るようになると、
1週間のワードローブの組立ても
かなり楽になると思います。
たとえば予備のシャツも用意しておいて、
午前中のシャツを、
午後になって変えてみるというのも
不可能ではないでしょう。

おしゃれ、ことに男のおしゃれは
一面、技術でもあります。
車をより安全快適に運転をする技術。
カメラを上手に操って、
美しい画像に仕上げる技術。
これと同じように服装という部分品を
巧みに管理し、組立てる技術なのです。

有名ブランド、
高価高級の服を買うことだけが
おしゃれではないのです。
お金さえあれば誰にだって
消費することはできるでしょう。
でも、私はおしゃれとは
むしろ創造だと思うのです。
それは知恵であり、教養であり、技術なのです。

少なくともおしゃれをすることが軽薄であり、
虚栄であるといった考え方は間違っています。
それにはまず、
1枚のシャツにアイロンをかけることで、
はっきりと理解できるでしょう。


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