服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第920回
アイ・ラヴ・ヨット・キャップ

ふだんどんな帽子を被ることが多いですか。
これはちょっとした愚問であるかも知れません。
今は帽子を被ることの少ない時代で、
「どんな?」と問うほうが間違っているのでしょう。

秋、冬、春の季節なら
私はマリン・キャップを被ることが多い。
ヨット・キャップとも言いますが、
要するに船員帽のことですね。
たいていは黒に近い濃紺のラシャ地で、
ツバが前にだけ付いている帽子。
「ラシャ」も今となっては懐かしい言葉ですが、
正しくは“メルトン”と呼ぶべきでしょうか。
しっかりと厚手のウール地。
多少の雨なら、傘をさすこともありません。
それに温かく、髪型を乱すこともなく、
落下物の危険を避けてもくれる。
なにかとお世話になっております。

ヨット・キャップを
親友にするための方法がひとつあります。
というよりも、
それはすべての帽子について言えることです。
つまり帽子をうまく被る秘訣は、
たったひとつしかないということになります。

それは自分なりのクラウン・ラインを設定すること。
「クラウン・ライン」は私が勝手に作ったものです。
クラウン(ヤマ)の端が頭に接する線のこと。
これは頭に対して、
かすかに左右上下に傾いているのがふつうです。
もっとも気持の良いラインにそれを設定する。
自分だけのクラウン・ラインをはっきりと意識する。

さて、その設定が終ったなら、
あとは思いきってクラウン(ヤマ)全体を
大きく左右上下に傾ける。
クラウン・ラインを固定したところで、
自由自在にクラウンのかたちをデザインする、
とでも言えば良いでしょうか。
実際に鏡の前でやってみると、
我ながら「おっ、これは良いぞ」
というかたちになることがあります。
それこそ最上の被り方であり、
帽子を親友にする方法なのです。

クラウン・ラインの決め方と崩し方は、
もっともヨット・キャップが
やりやすいのではないでしょうか。
この方法さえ分れば、
きっとすべての帽子に応用できるはずです。


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