服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第924回
大富豪とネクタイ

オナシス・ノットを知っていますか。
ギリシアの船舶王にして大富豪であった
アリストテレス・オナシスが愛用したところから、
その名前があります。

シャツの襟の間から
ネクタイの大剣部分が細く
直線的にあらわれる結び方。
いや、結び目自体は見えないのですから、
ネクタイの巻きちというべきでしょうか。
事実、オナシスはネクタイを巻いていたのだそうです。
カラーの下にネクタイを通し、
首のまわりに2回巻きつける。
で、その長いほうの一端を、
二重に巻いた輪の後から前に通して、
胸の前に垂らしていたわけです。
このために、結び目は見えないけれど、
さりとてゆるむこともない
独特のスタイルが完成したのでしょう。

オナシス・ノットには
ふつうの長さでは足りなくて、
オナシスは特別制の通常よりも長いネクタイを
注文していたそうです。
それはいつも黒無地のシルクだったのですが、
毎年一度に48本注文したといいますから、
さすがは大富豪ですね。

有名な結び方としては
ウィンザー・ノットがあります。
かのウィンザー公愛用の結び方
ということになっています。
そしてウィンザー公も実はオナシス同様、
特別注文のネクタイであったのです。

このおしゃれの王様は
タイの結び目がきっかり正三角になるよう
特別製をつくらせていたのです。
芯地を厚くし、結び目部分のカットが
直線的になるよう仕立てさせていたとのこと。
もちろんネクタイの生地自体も
やや厚手のものでした。
これではとてもウィンザー・ノットには結べない。
あまりに太く、大きくなりすぎるからです。

ただし第三者の目からは
いかにもウィンザー・ノットで結んだであろう、
と思えたのです。
つまりウィンザー公ご本人は
通常のプレーン・ノット
(フォア・イン・ハンド)式に結んでいたのです。

後世に名を残すほどの
結び方であるか否かはさておき、
常に自分らしい結び方を
ひとつ用意しておきたいものですね。


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