服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第957回
タキシード必勝法

『アシェンデン』という小説を知っていますか。
1928年にサマセット・モームが発表したものです。
このなかに次のような一節があります。

<<男の服装の中では一番着こなしにくいタキシードを、
  信じられないくらい見事に着こなしている。>>

これはウィザースプーン卿という
ある国の英国大使の姿。
燕尾服と較べても、
ディナー・ジャケット
(タキシード)のほうが難しいと、
モームは言っているわけです。
私もその通りだと思います。
では、どうすればタキシードを
上手に着こなすことが出来るのか。
それは実に簡単で、場数を踏めばよろしい。
要するに着用回数と着こなしの巧拙は
比例しているわけです。

―こう言ったのではお話になりませんから、
もっと具体的に。
まず最初に申上げておきたいことは、
タキシードは略礼装であること。
着る側が固くなったり、
緊張したりしてはいけません。
Tシャツにジーンズであるかのように、
楽な気持になること。

さて、次にタキシードで失敗しやすいのは、
ドレス・シャツです。
スタッド(飾りボタン)がうまく留められなくて、
胸元がシワクチャになる。
たいていの人がここで
二度とタキシードなんか着るもんか、
という気になります。
スタッドは下側から順に上へとゆっくり留めれば、
ほとんどシワにはなりません。
でも、もっと良い方法は、
フライ・フロント(比翼仕立て)の
ドレス・シャツを着ること。
これなら、飾りボタンは不要ですから、
シワになる心配はまったくありません。

そしてもっとも大切なことは、
黒の蝶ネクタイ。
注意深く、結び切りを避けて下さい。
自分の手で結ぶ式のブラック・タイを選ぶことです。
もし、どうしても黒無地がなければ、
ダーク・トーンや小紋柄でも結構です。
とにかく自分で結ぶ式の
蝶ネクタイであることを最優先に考えること。
こうすれば、たぶん
「信じられないくらい見事な着こなし」に
近づけることでしょう。


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