服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第976回
ウールのタイを結んでみよう

ウールのネクタイを結んだことがありますか。
たいていのネクタイはシルクですが、
時に夏用のコットンのネクタイがあるように、
冬のスポーツ・ウェア用にウールのタイもあります。
たとえばツイードのカントリー・ジャケットには
最適のものです。

いや、時と場合によっては
ツイードのネクタイもあるほどです。
どうしてこの世にウールのネクタイがあるのか。
それは質感のおしゃれを楽しむのに
欠かせないからです。

たとえば
コットン・フランネルのスポーツ・シャツに
ウールのタイを結び、フラノのヴェスト、
さらにツイード・ジャケットを羽織る。―
この全体を眺めてみると、
それぞれの生地の表面が
美しい統一感となってあらわれるからです。

ふつうおしゃれをしようという場合、
どうしても色や形、
デザインといったものから入ります。
けれども素材と素材の質感を揃えてみたり、
また逆にコントラストをつけてみたり、
というところまでには
なかなか目が届かないものです。

このような素材の表面感のことを、
専門用語で“ハンド”hand と言うのは、
以前にもお話をしたかと思います。
たとえばビロードや別珍のジャケットを羽織る時、
ちょっとこの“ハンド”という言葉を思い出して下さい。
質感(手ざわり)の組合わせは大丈夫だろうか、と。

さて、実際に、
ウールやツイードやビロードなどの
ネクタイを結んでみましょう。
とても結びにくい。
第一、スムーズに滑ってくれないからです。
では、どうすれば良いか。
これはもう時間をかけて、
ゆっくりとネクタイをあやし、
だますつもりになりましょう。
形を整えては結び、形を整えては結びということを
繰返すほかはありません。

ただしウール・タイは
一度結ぶとゆるみませんから、
強く結ぶ必要はありません。
ゆるく、ふわりと、大きく結ぶ。―
そしてこのような結び方こそ、極意なのです。
つまりシルクのタイにも充分通用する
最上の結び方なのです。


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