服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第992回
世界でたったひとつのヴェスト

同じ服を2日つづけて着ることがありますか。
この間、ふと気づくと私自身、
同じ服を何日もつづけて着ていました。
それがまたごく自然なことのように
思えたのですから、不思議です。
それは何の変哲もない、
黒の、シープスキンのレザー・ヴェストでした。
このレザー・ヴェスト、
前身はもちろん、背中の部分も同じくレザーで、
スポーツ・シャツや
スェーターの上に重ねても邪魔にならず、
しかも温かいのです。―
そんなわけで、
つい何日も着ていたというわけです。

妙なことに聞えるかも知れませんが、
私は子供の頃からチョッキが大好きでした。
今もはっきり覚えているものに
「ポンチョ」があります。
洋品店でそれを買う時、
「ポンチョ」だと教えてくれたので、
最後まで「ポンチョ」だと呼んでいたのです。
今にして思えばそれは
プルオーバー・ヴェストだったのですが。
表地がタータン・チェック、背がニット。
前ボタンもなにもなくて、
頭から被って着る式のチョッキでありました。
これも少年の私のお気に入りで、
いつもよく着ていたものです。
首のところに“V”字形の切込みを入れて、
両脇を縫うだけのことですから、
自分で作ってみようか、と考えることがあります。

暇な私は生地屋の店先をのぞいては、
いつもあの生地でなにか作れないだろうかと、
考えたりしているのです。

今、ぜひ作ってみたいと思うのは、
毛皮のヴェスト。
それというのも大きな生地屋さんで
毛皮を売っているのを見つけたからです。
毛皮のヴェストと聞けば誰しも驚くでしょうが、
実は裏側に毛皮を張ろうと思うのです。
もう今ではあまり着なくなった古いチョッキでも
あればそれを使ってみましょう。
何の手間も要りません。
ヴェストを裏返して、
毛皮を取りつけるだけの話。
余分の所はハサミで切落とせばそれで良いのです。
また、ところどころ裏の毛皮がのぞいていても、
それはそれで良いではありませんか。
それはともかく、あらゆる服のなかで、
自作をはじめるのに、
ヴェストほど最適のものは他にないでしょう。


←前回記事へ 2006年1月18日(水) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ