門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第5
ドリップに工夫の「喫茶葦島」

京都・三条河原町、南東角ビルの5階に
「喫茶葦島」はひっそりある。

今年(2010年)5月に開店したばかり。
開店前にプレオープン期間というのがあり、
それとも知らず偶然扉を開いたのであった。

エレベーターで5階に昇る。
ドアが開くと、そこから「喫茶葦島」の世界が始まっている。

贅沢な空間の広がり。
ゆったりとしたテーブル席が並び、
その奥にエル字型のカウンターが待ち受ける。
このカウンターの奥行きの広さが見事だ。
「ここはどなたのデザインですか」と聞くと
「辻村久信さん。ずっと自分が独立するときには
辻村さんにお願いしたいと思っていました」
と店主・佐々木晨人(あきひと)さんの言葉。物静かに話す。

まずはブレンドを注文すると、
5種類の豆をその場でブレンドしてミルに入れる。
「このほうがいつも同じ味わいを提供できますから」とのこと。
次にコーヒードリッパーにペーパーを敷き、湯を注ぐ。
ペーパーがなじむことに納得。
驚いたのが、普通は下に落ちた湯を捨ててから
新たにドリップするのだが、
なんとそのままゆっくりと湯を注ぎはじめた。
褐色の液体が数滴落ちると、
それを建水(茶道で使う湯や水を捨てるための道具)に捨てた。
そして通常のドリップが始まったのだ。
僕が凝視していたのに気づいたのか
「僕のところの焙煎は、
こうして最初の数滴を捨てたほうが
えぐみや尖った味がなくなるように思うのです。
いろいろ試してみたのですが、これが良い方法でした」
とゆっくりした口調で話してくれた。
たしかに飲んだブレンドは、
まろやかな香りと味わいのバランスがよく、
飲み口はまさに中庸であった。

その日は2杯目に深煎りを注文すると
「これはマンデリンです。
もしご希望なら、最初の数滴を捨てずに淹れましょうか」と。
「いえいえ、こちらのスタイルですから、
そのままでお願いします」。

マンデリン好きの僕にも、ぴったりの味わいであった。
それから何度も訪れているのだが、
気になるカレーを食べるチャンスを逃している。


【本日の店舗】
「喫茶葦島」
 京都市中京区三条河原町東入ル大黒町37 文明堂ビル5F
 075-241-2210


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2011年2月22(火)

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