門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第6回
祇園 大渡

このところ30歳代の料理人が元気である。
フレンチ、イタリアンはもちろんのこと、
和食の世界でもこの年代の独立組が目立っている。

京都・祇園で店を持つ。
これは和の料理人にとって一つの目標であり、
憧れの対象でもある。
その願いを叶えたのが、「祇園 大渡」だ。

主の大渡真人さんは九州・福岡の出身で
修業先のほとんどが大阪。
二年前に惜しまれながらも幕をおろした
大阪の名割烹「津むら」で閉店まで仕事をしていた。
奥様が京都出身、茶道を自ら学び、京都に魅せられ、
ようやく店を開いたのが一年半ほど前のこと。
京都の町家を改造し、
静謐な佇まいのカウンター席と
二階には茶室を設えることとなった。
建築デザインは「草喰なかひがし」や
「未在」を担当した杉原明さん。

カウンターの内側スペースは広く、
かなりゆったりと料理人が動けるような設計。
そこに炭の焼き台とおくどさんが鎮座する。

「最初に「あなたの料理は京都らしくないからいいね」
と言われたときはショックでした。
どこが京都らしくないのやろと思いましたが、
考えればそれをお客さまが喜んでくださっているのだから、
それでいいんだと思えるようになりました」と。

確かに料理はダイナミックである。

「津むら」の鱧の炭火焼きは名物であった。
それを大渡さんは「鱧のすりながし」として椀物に仕上げた。

昆布出汁と鱧のうま味が見事な調和を生み出し、
早くも人気の献立となった。
おくどさんでご飯を炊き、
そこでリクエストがあれば
温泉卵付の小さなすき焼きを供するなど、
食べる側の気持ちを汲み取ったコース作りは
非常にうれしいかぎりだ。

また、大渡さんの生来の明るさが、
食べ手だけでなく、
京都の若き(祇園界隈の料理屋の若手)料理人が、
仕事終わりでここのカウンターに集まり、
情報交換をするという。
いかにも彼らしいエピソードである。


【本日の店舗】
「祇園 大渡」
 京都市東山区祇園町南側570-265
 075-551-5252


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2011年2月25(金)

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