門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第9回
「直珈琲」で飲むパプアニューギニア

京都・河原町三条、北へ二筋目を東に入ると、
小さく「直珈琲」と彫られた文字が見える。
初めてなら白木の扉を開くには少し勇気が要るかもしれない。

その緊張感は、中に入っても変わらない。
というのも、席数はカウンターに6席のみ。
それもまるで割烹のような凛とした佇まい。
壁はすべて土壁、カウンター後ろの壁には
一輪挿しがポツンと飾ってあるだけ。

建築デザインは木島徹さん。
木島さんは「酒陶 柳野」などをデザインした建築家。
ぎりぎりまで無駄を省き、
濃密な空間を作り上げる手法がここにも生かされている。
店主の渡辺直人さんはまだ20歳代の若さだが、
骨董や古本など趣味が老成タイプである。

珈琲は自家焙煎の豆をペーパードリップで淹れる。
僕は比較的深煎りの「パプアニューギニア」を飲む。

コク、苦味、優しい甘みのバランスがいいのだ。
渡辺さんは「この干し草のような香り、
それも上品でまとまりがいいです」と話してくれた。
本当にインパクトは結構あるのだが、
上品という感じが強いのだ。
数種類選択肢はあるのだが、
ほとんど迷うことなく
パプアニューギニアを選んでしまうのである。

ときおり頼むハムサンドイッチも、
トーストされた食パンの微かな甘みと、
ハムの塩分と旨みが絶妙の塩梅を作り上げている。
これにまた深煎りの珈琲が合うのだ。
カツサンドやハムサンドなど
肉系の具材と珈琲は素敵な相性を示してくれる。

ここの珈琲が飲みたくて人は訪れるのだが、
珈琲の話題より、道具や花、
小説や映画などが話題の中心になることが多い。
また店内に流れる音楽はジャズがメインなのだが、
これもまた
渡辺さんの渋好みが反映されているのかレアものも多い。
僕もここでその音を耳にして何枚かCDを購入した経験がある。

珈琲を味わうことと同時に、
その背景に流れる店主の好みも
また大事だということを知る一軒である。


【本日の店舗】
「直珈琲」
 京都市中京区河原町三条上ル二筋目東入ル恵比須町534-40
 電話番号は非公開


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2011年3月8(火)

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