門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第10回
会員制から心機一転「いか里」

大阪の北新地、ここ数年の変化は著しい。
昼ごはんは、カジュアルなスタイルが増え、
500円から楽しめるようになってきた。
夜の北新地も同様の動きが目立つ。

昨年末にスタイルを一新した料亭「いか里」。
これまでは会員制を旨として一見さんお断りの体制であった。
ここは女将さんが仕切る店であったが、
三代目主人・木村篤司さんが料理人であり、
いよいよ彼がカウンターの中に立ち、
割烹様式の料理店となった。
それを機に会員制をはずし、
広く一般の人たちに向けて営業を始めた。

エッセイストの松山猛さんと一緒に出かけた。
最初に供された海老とトマトのスープ。

温かく甲殻類のコクとトマトの酸味がうまく絡んでいた。
これで身体も温まり、
料理に向かう気持ちが始動する。
次の椀物が面白かった。
鴨と水菜の椀だ。

鴨の味わいが出汁にとけ、コクが生まれている。

「これはいいね」と松山さん。
まさに鴨の出汁を吸い込んだ水菜が旨い。
しゃきっとした水菜の食感がいいリズムを作り上げてくれる。

鰆と牡蠣の料理もきた。

分厚い鰆の味が濃い。
そこに牡蠣のほろ苦い味が加わる。
タンが出たり、締めのご飯は卵と肉のそぼろバージョンである。

ざっくり混ぜ込んで食す。
なんだか懐かしい味がする。

かなり味の濃いメニューが続く。
これが三代目「いか里」の主人が
変化を求めて作り上げた料理である。
木村さんがカウンター内で魚を調理する。
この様子を眺めているだけでも楽しい。
「面白くなったね。結構ボリュームもある」
と松山さんは印象をもらした。

北新地で料理の味わいを求めてやってくる料理屋となった。
まさに時代の要請にきちんと答えている。

最後のデザートが、牛乳のアイスクリーム、
文旦と柚子の香りが効いていた。

これもまた変化の一端である。
これからどうスタイルが変わってゆくか。
当分はその変遷を見つめていたい。


【本日の店舗】
「いか里」
 大阪市北区曽根崎新地1-6-12
 06-6341-0741


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2011年3月11(金)

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