門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第11回
苦味の強さと後をひく甘さ「王田珈琲」

入口横に縦書きの「王田珈琲専門店」という筆文字が鎮座する。


これを見ただけで、
この珈琲店はただものではないという雰囲気が漂っている。
まして近づくと焙煎された珈琲豆の香りが流れてくる。

店内に足を踏み入れると、
左手に長く伸びたカウンター、
右手にゆったりとしたソファ席がある。

そしてジャズの音色が耳に届く。
以前訪れたときよりCDの数が増えたように思う。

「CD増えていない?」
「そうなんです。すっかりジャズにはまりまして。
お好きなお客さまから教えていただくことも多くて、
どんどん増えている状態です」
と、店主・王田洋晶さん。

開店して一年が過ぎた。
「少し珈琲変わったのです」と。
珈琲豆を挽きネルドリップで淹れる。
その工程に変化なしだが、じっくり見ていると、
ネルドリップに湯を注いでいるのに
一向に珈琲の液体がポットに落ちてこないのだ。
じっくり少しずつ湯を注ぐ、
徐々にドリップ内に湯が溜まってゆく。
蒸らしの過程が大事だと聞くが、
この状態をいったいなんと呼べばいいのだろうと思ってしまう。

次の瞬間、ポトリと一滴の液体がポットに落下した。
「焙煎を少し深くし、挽き方を細かくしました」とのこと。
ネルドリップは三枚つぎである。
この手作りのドリップと王田さんの技がなせる結果といえる。

出来上がった珈琲を一口含むと、
とろりとした舌触りに続いて深い苦味が舌の上を転がってゆく。
そこからじんわりと甘みが姿を現す。
たしかにこの珈琲を初めて飲んだ人は、
なんと苦味の強い一杯だと思うに違いない。
しかし、じっくり味わうと後をひく甘さこそ、
この珈琲の本領だと感じるはず。

いまだ手回しの焙煎機と格闘しながら、珈琲豆を扱う。
数秒単位で豆の状態は変わってゆく。
それを目と鼻と手のセンサーを
フル回転させながら的確な焙煎具合を決める。
もっとじっくり淹れるデミタスも一度お試しあれ。

【本日の店舗】
「王田珈琲専門店」
 京都市中京区御幸町夷川上ル松本町575-2
 075-212-1377


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2011年3月15(火)

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