門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第12回
蕎麦・料理「あたり屋」

店が呼ぶということがある。
これは古本でも何度か経験している。
本の場合は、背表紙が語りかけてくるのだ。

食いしん坊の先輩から
「大阪で素晴らしい蕎麦掻きに出会った。あれは秀逸」
と聞いた日の夜、大阪でレストラン「カハラ」の森義文さんが
「料理マスターズ」を受賞したパーティが開催され、
そこで大阪・西天満の蕎麦屋「なにわ翁」の勘田拓志さんから
「うちから出た『あたり屋』です」
と紹介されたのが土井康義さん。

彼こそ先輩から強力に勧められていた蕎麦打ち職人であった。
そのどっしりした体躯は、
いかにも旨いものを作りそうなオーラを発している。
これは天からの声である。

やはりそうであった。
翌日偶然にも「あたり屋」から
一駅のところで午前中に会議があり、
ちょうど昼前に終了した。
迷わず電話を入れ道筋を聞く。気分は高まるばかり。

到着し、メニューを開く。
蕎麦だけでなく、酒のアテもかなりの充実ぶりだ。

逡巡するが、ざるそばとねぎそば、そばかぎを頼む。
そばがきがやってきた。見た目はシンプル。

箸を入れると弾力がある。
一口目はなにも付けずにそのまま食べる。
なかは耳たぶのような柔らかさだ。
そしてそばの香りがずしーんときた。
素晴らしい。
続いて塩を少し付ける。今度は甘みを感じる。
これがすさまじい。

次はわさびだ。
味がどんどん拡がってゆく。
締めは割り下醤油を付ける。
これは割り下の旨味と相まって、
そばがきが別の表情をのぞかせた。
どの食べ方にも軍配を上げたいぐらいである。
これにはすっかり脱帽状態となったのだ。
そして先輩の言葉が真実を告げていると改めて実感した次第。

むろんざるそばの香りも申し分なし。

ねぎそばは京都の田鶴さんという農家が作った九条ネギの香りと
旨味が見事で、出汁やそばとの出会いを上手く演出してくれた。

次回は夜にゆったり訪れたい一軒である。


【本日の店舗】
「蕎麦・料理「あたり屋」」
 大阪市淀川区東三国5-11-22
 06-6391-8585


←前回記事へ

2011年3月18(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ