門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第13回
「カフェマルゴ」店名に込められたエピソード

博多座で芝居を観るため博多に行った。
割りと早い時間に到着する新幹線であった。

芝居の前に珈琲を一杯飲みたい。
前夜に調べると
薬院に昨年(2010年)開店した「カフェ マルゴ」
という店があった。
自家焙煎だ。カウンターにすわり珈琲を注文する。

初めての店ではマンデリンにすることが多い。
マスターの白石泰隆さんが、ネルドリップを拭き、
余分な水分を除いていた。
ここはネルドリップスタイルだと思っていると、
なんとそれを円錐形のドリッパーに貼り付けたのだ。
これには驚いた。初めて見る光景だ。

「ずっとこのスタイルですか」と尋ねると
「修業をしていた店も、ずっとこのやり方をしていました」
との返事であった。
たしかに安定感はありそうだ。
豆がぷっくりと膨れてゆく。
マンデリンは、僕の好み。
土っぽい感じが残り、苦味がやや強い。
だが、最後にはさわやかな甘みが後を引くという味わい。
供されたカップを見て
「これマイセンですよね」
「そうです。お分かりですか。うれしいです」と。

自家焙煎珈琲店でマイセンを使いこなしているところは、
そんなに多くない。
カップが置かれた棚を眺めると、
リチャード・ジノリや
ロイヤル・コペンハーゲンなど全て白だ。
これも見事。

フレンチトーストもオーダーした。
バゲットに卵をたっぷり吸い込ませカリッと焼き上げる。

歯を入れ、つぎにバゲットからあふれ出る液体の旨いこと。
そこにアイスクリームが重なり、
ひとつの形が出来上がっていった。
これは看板となる一品という予感がした。

「カフェ マルゴという店名はどこからですか」
という質問に「僕を可愛がってくれた祖母と祖父が
八百屋を営んでまして、
小さい頃は後を継ぐと言ってたんですが、
結局別の仕事を選んでしまいました。
その店の市場での符丁が○五だったので、マルゴにしました」と。
なんだかほっこりするエピソードで、
この店の在り方を感じてしまった。


【本日の店舗】
「cafe MARUGO」カフェ マルゴ
 福岡市中央区薬院2-10-23
 Tel:092-713-6554


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2011年3月22(火)

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