門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第16回
比類なき「海力」スタイルの寿司

大阪でも江戸前の寿司が席巻しそうな勢いである。
もっとも握りが江戸前、押し寿司が関西
という図式はいまも残っている。

ここでいう江戸前とは寿司飯の酢の利かせ方や砂糖の有無、
ネタに対する仕事っぷりのこと。
酢がかなり利き、塩分濃度も強い
寿司飯が増えてきたのだ。

しかしここ大阪森之宮の「海力」は
常にオリジナリティを大切にする。

従来の寿司飯がやや甘い大阪スタイルでもなければ、
江戸前の寿司でもない。

「海力」流、つまりここならではの寿司を食べることができる。
もちろんいろんなパターンを楽しむことが可能だ。
アテを切ってもらい料理を
少しつまみ締めに握りを数貫というのもいい。
だが、僕がいつもリクエストするのは、
こちらが一切醤油をつけない「大将おまかせ」コース。
大将こと金田太志さん。

スタートが料亭である。
したがって和食に関する技術や知識を寿司に投入するのだ。
おまけに研究熱心、負けず嫌いという。

このコースのきっかけともなった
「イカ・雲丹」という寿司がある。
包丁目を入れたイカを握る。
その上に雲丹を乗せる。
イカと雲丹と寿司飯が見事な調和をみせるのだった。

これで合わせ技に火がついたのか、
金田さんの研究が始まった。

さくら(馬肉)のあぶりに雲丹。
これは寿司飯におこげを使う。
やや香ばしさがあり、それとさくらのあぶりの旨みがよく合う。
そこに雲丹の濃厚さを加えるのだが、
口のなかで美しい丸を描き、全てが同時になくなってゆく。

フグの白子醤油焼きを握る。
白子が溶けたときの寿司飯の感じはリゾットを想起させるほどだ。

爆弾と呼ばれる一品は、
ネギトロの中に細かく切った沢庵を混ぜ込む。
このわずかなコリッとした食感が、
ネギトロの旨さを数倍にしてくれるのだ。

太刀魚のあぶりにはバルサミコ酢を塗る。

それも一工夫したバルサミコ酢だ。
かように金田さんの寿司は
比類なき「海力」スタイルなのである。


【本日の店舗】
「海力」
 大阪府大阪市東成区中道2-4-4
 06-6974-1239


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2011年4月1(金)

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