門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第19回
ラテンの明るさに包まれるカフェ「バール・ウーノ」

いまでこそ旨いエスプレッソを供するところは増えたが、
ここ「バール・ウーノ」は大阪で
素敵なエスプレッソを飲ませてくれる貴重な一軒であった。

店名の「ウーノ」。
イタリア語で「1」の意味だ。
そしてオーナーが宇野圭介さんという。

この遊び心が店の雰囲気や味わいに大きく関係している。
ラテン気質なのである。

宇野さんの声は野太くよく通る。
言葉がストレートで気持ちよく響いてくる。
ノリが極めて明るいのだ。

エスプレッソを淹れるスタイルがいい。
珈琲豆の分量を調整する姿が粋である。
力をたくみに抜いているようで、
手首の動きは鋭い。
あとはテーブルに水と砂糖、そしてカップを並べるだけ。
この砂糖の容器。
いまではイタリアでも見ることが少なくなった。

現地では衛生上の問題から全て砂糖は袋入り使用となった。
スプーンで好きな量だけ砂糖を入れる。
かき回して飲む。
苦味とコクが渾然一体となって
胃袋に収まってゆく。
なんとも快感を刺激されることか。

先日も「マスター髪型が変わったね」
と話すと「ニューヘアーで
淹れるエスプレッソは旨いでしょ」
と即座に返ってくる。

たしかにおいしいエスプレッソを飲ませてくれる店は増えた。
自家焙煎、スペッシャリティコーヒーも素晴らしい。
しかし、ここでエスプレッソを飲むと、
そんなことは全く関係のないところで、
素敵な珈琲を淹れてくれる人がいるなあと実感する。

珈琲は趣向品である。
だから作る側も自由だし、
飲む側も好きな店を選べばいいのだ。
気分と相手によって変えるのもありだ。
むしろそれがいい。 

「バール・ウーノ」の楽しみは、
エスプレッソが旨いことは当然として、
なにより店内にイタリア、
つまりラテンの明るさや
気軽な雰囲気が充満していることなのだ。

それは宇野さんの生き方が、
そのまま伝わってくるからなのだろう。

【本日の店舗】
「バール・ウーノ」
 大阪府大阪市北区天満橋1-8-69
 06-6353-1209


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2011年4月12日(火)

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