門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第20回
滋賀の旨い店「コクトゥーラ桜井」

もう10年近くも前のことだ。
「あまから手帖」という関西の食雑誌で
初めて滋賀特集を組んだ。
滋賀県を主題に特集を組むことに対して
編集部では議論を繰り返した。

「滋賀に旨い店があるのか」
「滋賀にそれを求めてでかけるのか」
「絶対にエエ店はあるはず。知らんだけ。
それを探すのが編集者の仕事」など議論百出であった。

ある日、一人の編集者が
「すごい店を見つけました。これで滋賀特集は決まりです」
と受話器を遠ざけたくなるような大声で電話をかけてきた。

それが「コクトゥーラ桜井」である。
石山の幹線道路沿いにぽつんと佇むシンプルな建物。
特集の巻頭を飾り、その号は売れ行きも好調であった。
以来、ときおりこの店を訪れるのが楽しみである。
なかに入るとシックな造りだ。
カウンターと個室に分かれる。
カウンターといえど調理風景が見られるわけではない。
あくまで厨房は隠れている。

料理は和を軸足としながら
わずかに他のジャンルが顔を出すこともある。
決して和の領域を超えることはない。
店主の櫻井克則さんは、
京都で修業を積んだのちこの地で独立。
滋賀県の食材を遣うことにも熱心である。

この季節は琵琶湖の貴重なもろこが供された。

ふきのとうとふきのとう味噌をあしらった
京芋のくず寄せは季節感あふれる素敵な料理であった。



締めの御飯も焼きおにぎりに鯛を乗せ、
それを茶漬け仕立てにするなど
随所に櫻井さんの発想が盛り込まれる。

また料理もさることながら、
器に対する造詣も深く、
使われる器を愛でる楽しみもうれしい限りだ。



日常的に供される器も楽しいが、
秋ごろには「器」が主題となって料理を考えるときがある。
この秋は「魯山人うつし」がテーマになるという。

これが毎年種々のテーマで開催されるのだ。
そのときの料理がまたエキサイティングな様相を呈する。

なんといっても料理人が器を楽しんでいるのが
こちらに伝わるのが素晴らしいのだ。


【本日の店舗】
「コクトゥーラ桜井」
 滋賀県大津市国分1丁目217-10
 077-533-3002


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2011年4月15日(金)

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