門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第22回
季節感を堪能「子孫」

西宮・夙川、苦楽園、甲陽園
という界隈はかつてフランス料理店が多いことで名を馳せた。
だが大正年間の甲陽園は遊園地や
撮影所、温泉、高級旅館が並ぶ処でもあった。

現在は閑静な住宅街、
そこにある「子孫」も以前は旅館を営んでいた。
当主・藤原研一さんは
「どうしても料理屋さんをやりたい」
と滋賀の名料亭「招福楼」で料理の道を学んだ。

瀟洒な数奇屋造り。

門から玄関までのアプローチですでに気分は高揚する。
座敷でゆったりとした時間の流れを感じながら料理を楽しむ。
板前割烹というライブ感あふれる料理とは異なる趣向。

まずは先付から始まる。
続いて煮物椀、造りと続く。

冬に訪れたときの煮物椀は松葉蟹身蒸であった。
これがすごかった。どれだけ松葉蟹を使うのかと驚くばかり。
その具材と出汁の出会いは唸るしかないほどであった。

造りのあとに羹が出た。
次に八寸というのがここのスタイルだ。

人数分を大皿に盛り込み、それを取り分ける。
美しさと季節感満載の八寸である。

椀物とこの八寸に特徴ありだ。
コースによって替の八寸がでることもある。
つまり八寸の二段重ねとなる。このときも八寸は海鼠、
蟹味噌、トロ漬け芥子黄身酢と3品登場した後に、
替では車海老キャビアと唐墨大根となった。

同行の友人達は「ここまでやってくれるのかという感じやね」
と声を上げていた。
 
そこから焼き物(まながつお西京味噌漬焼・千枚漬)、

強肴(雲子なめ茸柚釜焼)、
箸休(伊勢海老味噌すり流し 花山椒 鶉温泉玉子)、
鉢物(鰤大根 針柚)と続き、
大団円の御飯となった。
そこで見せられた蛤ご飯。
これも圧巻であった。蛤の分量が半端ではない。
米粒一つひとつにまでしっかりと蛤の味が付いている。

あとは手作りのお菓子と薄茶となる。
この締めの薄茶で料理を締めくくる。
全体を通して季節感を堪能する組み立てと、
贅沢感を満喫したのであった。これが料亭の料理と実感した。


【本日の店舗】
「子孫」
 西宮市甲陽園本庄町5-21
 0798-71-1116


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2011年4月22日(金)

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