門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第24回
常にオーダーメイド「し乃」

京都は先斗町から木屋町通に抜ける細い路地が何本もある。
その入り口には「通り抜けできません」あるいは
「通り抜けできます」という手作りの札がつけられている。
いかにも京都らしい風景である。

その一本の路地にある「し乃」という料理屋さん。
割烹でもなく、居酒屋でもない。
カウンターの上には大鉢でおばんざいが並ぶ。
そこから好きなものを選び、
献立表からも食べたい料理をリクエストする。

この日、カウンターから選んだのが鯛の子、
いわし、若竹、菜の花の胡麻和えだ。
鯛の子はたっぷり出汁を吸い込んだ味が濃い。

いわしは程よい味付け。

若竹は季節感たっぷりで、
筍のほろ苦さと出汁のバランスが見事。

菜の花も苦味が利き、胡麻の香りとの出会いも素敵だ。

じつは、この店を訪れる大きな目的がある。
はもフライを食べたいからなのだ。
それもはもフライにウスターソースをかけ、熱い白御飯と食べる。
この両者の出会いこそ日本人の贅沢だと思ってしまう。
ウスターソースの辛みと酸味、甘みに、
はもの旨さが合わさったときの感激というか、
舌に与える刺激はクセになってしまう。
「一応はもは年中置いていますから、いつでも大丈夫です」
と店主・中川嘉和さんの言だが、
やはり暖かくなってから食べたいもの。
この日は、そこにイカのフライをプラスした。
これも白御飯にいい相性。
ウスターソースの威力を再び認識である。

「うちに材料のあるものでしたら、なんでも作ります」
と中川さん。
南座に出演する役者さんが常連客ということも
関係しているのだろうか。
常にオーダーメイドという精神を持ち続けているのがすごい。
そんな注文から生まれたカレーライスや焼き飯、
餃子など他の店とは一味違ったメニューが多いのも
特徴の一つでもある。

一人でも、親しい仲間とでも。
どんなシチュエーションでも無理なく楽しめる。

【本日の店舗】
「し乃」
 京都市中京区木屋町通四条上ル2丁目下樵木町203-8
 075-221-2240


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2011年4月29日(金)

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