門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第30回
フランス料理店「ラ・シーム」

大阪・本町のフランス料理店
「ラ・シーム」のオーナーシェフ・高田裕介さん。
多才な人物である。
何度か食しているうちに、その懐の深さを感じていた。
調理師専門学校のフランス校を卒業、
大阪のフレンチで修業をしたのち
30歳を超え再びフランスに出かけたという経験を積む。
これはなかなか勇気と決断を必要とすることだ。

そして2010年この店を開いた。
「クラシックをベースとしながら、
時代の息吹を取り入れたいと思っています」。
だから、フランス料理を構成するフォンやソースを重要視する。
「いつの頃からか、
ソースではなくジュという言葉が主流になってきましたが、
僕あくまでソースを大切にしたいと思います」と力強く語った。

とある日のメニューだが、スタートは海老のロワイヤル。

濃厚な海老のロワイヤルにその泡もプラスされる。
香り、味わいともに甲殻類のうま味で攻めてきた。
続いて花ズッキーニとヒメジのファルシーである。
懐かしいが凝縮したおいしさを感じる。

魚料理はアイナメのポワレだ。

皮目はカリッと焼け、赤ワインのソースがしっかり。
ジャガイモ、モリーユなど付け合せもコクをプラスする。
この勝負の姿勢も頼もしい。
グラニテをはさみ、メインの肉料理である。
バスク豚のパイ包み焼きだ。

この美しい焼き色。
なかなかここまできっちり焼き色をつけるのは難しい。
つい手前で抑えてしまう。
サクッとナイフを入れると
豚の香ばしい匂いが鼻と胃袋をおおいに刺激するのだ。

パイ生地の焼き具合の見事なこと。
こんな料理を楽しめるレストランは貴重だ。

デザートはアプリコットのゼリーとクレームダンジュ、
そしてイチゴのタルト。


最後まで攻めの姿勢は続いた。

ビストロノミーの旗手と評されるが、
そのポジションにとどまらずに
次のステージを見越した料理がいつも楽しみである。


【本日の店舗】
「ラ・シーム」
 大阪市中央区瓦町3-2-15 本町河野ビル1階
 06-6222-2010


←前回記事へ

2011年5月20日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ