門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第31回
古書と珈琲を楽しむ

京都、河原町通と木屋町通の間にあるにも関わらず
非常に分かりにくい場所だ。
友人から何度「近くにいるはずなんだけれど、
場所が分からない」という電話を受けたことか。

店名の「エレファント ファクトリー コーヒー」は
村上春樹さんの小説「象工場のハッピーエンド」に由来する。
入口そばの棚にはその著書がある。
じつは、この店には多くの古書が置かれている。

「好きな本を読んでもらってもいいし、
気に入ってもらえたら買ってください」
とマスターの畑 啓人(よしと)さんは話した。
初めてここの古書を見たとき、
片岡義男さん、小林信彦さん、松山猛さんなど
あまりにも僕の好みと類似していたので
「これはマスターの趣味ですか」と聞いてしまったほどだ。
「東京の友人が定期的に送ってくれるのです」
という返事であった。
訪れる度に、数冊購入することもある。

店内のウッディーでどこか隠れ家っぽい雰囲気も気に入った。
畑さんは、以前、雑貨を扱う会社に勤めていた。
イタリアでコーヒーの旨さを知り、
日本各地で珈琲を飲んでいるうちに自ら店を開くことになった。
珈琲豆は北海道の友人に依頼した。

「オープン前は、
彼の家に泊まりこんで好みの焙煎をお願いしました」と。
深く煎られたマンデリンは、
苦みを感じながらもコクとのバランスが絶妙で、
それを頼むことが多い。

先日「異変」が起こった。
「じつは自家焙煎を始めたのです」と畑さんが見せてくれた焙煎機。

「友人がフランスで見つけてくれたんですが、
これを手にするとどうしても焙煎がしたくなって」と。
手回しの焙煎機である。

珈琲用の焙煎機という保証はないらしいが、
これを触ると、焙煎したくなるという気持ちは理解できる。

「深々煎り」とある。
「週に2回ぐらいなんですが・・・」と。
次は必ずその深々煎りの珈琲を味わってみたいと
強く思ったのである。
興味がつきない、そしてつい長居をしてしまう珈琲店である。


【本日の店舗】
「エレファント ファクトリー コーヒー」
 京都市中京区蛸薬師通木屋町東入ル備前島町309-4 HKビル2階
 075-212-1808


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2011年5月24日(火)

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