門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第36回
大衆食堂「当志郎」

大阪のなんばが拡がっている。
高島屋が増床を繰り返し、南海電鉄の商業ゾーンは、
なんばCITYを皮切りになんばピア、
なんばこめじるし(通称なんこめ)、なんばパークスと
どんどん南に伸びている。
そこには高層マンションや大型家電ストアなども誕生し、
街の様子が変わりつつある。
そこから少し南に歩くと、木津市場にたどり着く。

ここはプロが仕入れに訪れる市場で、
つい数年前に建て替えも終了した。
飲食店は一般市民が訪れることも多い。
かつてはミナミで朝まで遊んだ連中が、
よく朝飯を食べに来ていた。
その中の一軒「当志郎」という大衆食堂にはときたま顔を出す。

ガラスのショーケースにおかずが入り、そこから好きな皿を選ぶ。
御飯と汁物を取るというスタイルである。

この日は昼ご飯に訪れた。
「今日はマグロがおとくな日です」と
若き大将の岩間伸吾さんが教えてくれた。
マグロと中落ちを選ぶ。

厨房の中から「ネギマもよろしいよ」とお母さんの声もかかる。

反対に「汁ものはなにがエエの?」と聞くと
「いまやったらアサリがおススメ!」とのこと。
それを注文する。

マグロの脂ののり具合には驚く。
香りも十二分にある。
白い御飯がすすむこと。
玉子焼もお袋の味を思い出させる。

そして感動したのがアサリの味噌汁だ。

アサリの旨みが濃厚だ。
貝のエキスもよく感じられる。
これまた白い御飯にかけたくなるほど。
充実した昼ごはんとなった。

時たましか訪れない僕達でも会話が弾む。
だから毎日市場に通う人たちとなら、
もっと濃密な会話が交わされているのだろうと予想がつく。
営業は夜明け前から午後1時まで。
中には昼から酒を飲む人たちも現れ、
盛り上がりを見せることもある。
ともあれ、仕込みはすぐそばの市場、新鮮な素材を味わえ、
元気をもらって帰るのだ。


【本日の店舗】
「当志郎」
 大阪市浪速区敷津東2-2-8 木津市場内
 06-6649-6873


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2011年6月10日(金)

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