門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第38回
懐石・宿 近又

京都・錦市場は、京都の台所である。
また観光名所としての地位も確立している。
そのすぐそばにある
「懐石・宿 近又」の主・鵜飼治二さんは7代目。
7代目は自ら包丁をにぎり調理を担当する。
じつは宿の主が料理人というのは
京都で珍しい存在ともいえる。

「かつてはずっと包丁を握っていましたが、
最近は料理長が育ってきたので任すようにもしています。
なにせ錦市場が近いというのは
うちの食材庫がそこにあるというようなものですから」
と現状を語ると同時にロケーションの魅力を教えてくれた。
ここは懐石・宿というように、
泊まらずとも懐石料理を味わうことも可能だ。
そして朝食を食べられるのも特徴の一つ。
先日、朝食を食べに行った。
値段は3675円と4200円。


座敷だと1050円ずつアップする。
違いは魚の種類とデザートの有無。
この日は鮭とカレイであった。
胡麻豆腐はねっとりした口当たりに胡麻の風味が追いかけてくる。
カレイは一夜干したもの。
旨みが凝縮しており、御飯がすすむ。
なすびとじゃこのたいたんという
典型的な京都のおばんざいが登場する。
賀茂茄子の田楽も同様。

「魚は小浜、舞鶴、明石、泉南と
4箇所から直接持ってきてもらってます」とのこと。
7代目は食育にも非常に熱心で、
料理教室はもちろんのことながら、
出汁のとり方なども各地で講演活動を行っている。
「そしたら出汁巻を巻いてきます」と。
ほどなくして出てきた出汁巻の美しいこと。

味わいのほうも出汁がよく利いているのだが上品である。
そのままで十分おいしいのだ。
炊き立ての白御飯が見事。
デザートが出たところで
「コーヒー飲まれますか」という問いに思わず二つ返事。
このコーヒーが素晴らしかった。
豆から厳選し、きちんと淹れたというのが分かる。
「これいいですね」と話すと
「ちゃんと豆を選んで、そのつど淹れてます。
スタッフにもみんなこれを飲ませています。
そやないとコーヒーの味が分かりませんから」と。
これぞ食育である。
日常の食に対する姿勢が大事だ。
うれしい朝食であった。


【本日の店舗】
「懐石・宿 近又」
 京都市中京区御幸町四条上ル
 075-221-1039


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2011年6月17日(金)

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