門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第42回
「祇園さ々木」のカウンター

京都でもっとも予約が取りにくい割烹の一軒が
「祇園さ々木」である。

祇園の地で暖簾を掲げ十数年経つが
二度の移転を繰り返し、現在の一軒家となった。
1階のカウンターは長く伸びた16席。
その中央にピザ窯を設置するなど大胆な取り組みが
食べ手の注目を集める。
午後6時半、一斉に「佐々木劇場」は
大将こと佐々木浩さんの掛け声でスタートする。
大将を中心に複数のスタッフが
一糸乱れぬ動きで調理に取り掛かる。

前菜は鯛の白子と真子、そこに車海老が入る。
真子は味噌漬けで酒を呼ぶのだ。

そして向附に移る。
必ず入るトロのにぎり、
この日は鯛の昆布締めにワラビ、和牛のたたきだ。

じつはここに立派なトリガイと、
鰹のたたきのにぎりが加わる。
このあたりですっかり佐々木ワールドに入ってゆくというわけだ。

中央のまな板で大将は、食材を贅沢かつ大胆に、
ときには繊細に扱う。
それを周りからスタッフがサポートする。
この流れを見るだけでもカウンターは値打ちありだ。
この日も熱々の蒸しアワビが登場した。
アワビは磯の香りを放ち、
食すと海のエキスをがっつり感じるのだ。

そして佐々木さんは、
それぞれの食材について細かく説明を加える。
それもご馳走の一つだが、
ウンチク臭くならないのが技でもある。
ほぼ7から8皿供したあとが締めのご飯だ。
最近は2種のご飯が現れる。
まずは大間のウニに能登半島の岩海苔ご飯。
誰が食べても文句なしに旨い。
それをさも当然のように出すのが佐々木さんである。
一気にかきこんだあとに出てきたのがフカヒレご飯。
旨みたっぷりの出汁でからめたフカヒレと
白いご飯の融合には驚き、うれしくなった。

どちらもおかわり自由である。
この思いっきりの良さが食べ手を
ますます「佐々木劇場」に誘い込むのであろう。

そのテンションを持続させているのが佐々木浩さんの凄みである。
食べて飲んで2人で4万5000円強と、
決して安くない金額だが、
その値打ちを感じる人が多く訪れているのである。


【本日の店舗】
「祇園さ々木」
 京都市東山区八坂通り大和大路東入る
 075-551-5000


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2011年7月1日(金)

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