門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第45回
倉敷珈琲館

岡山・倉敷には美観地区という界隈がある。
倉敷川沿いに立ち並ぶ古き時代の建造物が名物。
白壁が並ぶ光景は圧巻だ。
昭和5年に日本初の個人美術館としてスタートした大原美術館。
泰西名画から現代美術、東洋の美、
工芸品などのコレクションは素晴らしい。

この界隈は江戸時代から
大正・昭和初期の建築物がきちんとした形で保存されている。
そのなかにあるのが「倉敷珈琲館」。

玄関口には古びた焙煎機とコーヒー豆を入れる麻袋が並ぶ。

レンガをうまく配したレトロな店内からして
美味なるコーヒーを供するという雰囲気を漂わせている。
中庭で陽光を浴びながらコーヒーを味わうのも
素敵な時間の過ごし方だ。

ここには「琥珀の女王」というオリジナルのアイスコーヒーがある。
水出しコーヒーにリキュール、ハチミツ、
ミルクを加えたコーヒーが入るのだ。
まずミルクのとろりとした口当たり、
そこからコーヒーが持つ苦みや酸味、
そしてリキュールの芳醇な甘みなどがプラスされ
独特の一杯となってゆく。
まさに独自の味わいと呼ぶに相応しい。

ストレートは「マタリ・モカ」を選んだ。
ふくよかな酸味と甘みのバランスの良さ。
深く煎っているのだが、パンチがすごくあるというより
むしろまろやかな飲み口が特徴といえる。

1971年開業というから40年の歳月が流れている。
古い建物を生かし、そこに永年多くの人たちが訪れ、
その温もりなどがいい具合に溶け込んでいる感じを受け止める。

美観地区ゆえ観光客も多い。
だが地元の人たちが
ゆったりとした時の流れを楽しみたいときでも
十分に対応可能である。
つまりコーヒーを楽しみたい人なら、
誰でも受け入れる懐の深さを持っているコーヒー店なのである。

僕は数十年ぶりに訪れたのだが、
そこに流れる時間が変わっていなかったのになにより驚き、
それを守ってきた店の在り方にうれしくなった。


【本日の店舗】
「倉敷珈琲館」
 岡山県倉敷市本町4-1 
 086-424-5516

 


←前回記事へ

2011年7月12日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ