門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第50回
カドヤ食堂

何年前のことだろう。
真夏の午後、大阪の今福鶴見という地下鉄の駅から数分歩いた。
午後一時をはるかに回っているというのに行列ができていた。

何人ものラーメンフリークから噂は聞いていたし、
主の橘和良さんとは「望麺会」(ラーメンブロガーオフ会)で
言葉を交わしたこともあった。
だが、ここまで行列とは予想もしなかった。
10分あまり待ち、店内に入る。
何の迷いもなく中華そばを頼んだ。

スープは澄んでいる。見た目は極めてシンプル。
一口スープを飲む。
「なんじゃ、これは!」というぐらいのインパクトがあった。
舌にどっしりのっかかるうま味の集合体には度肝を抜かれた。
思わず続けて何口もスープをすすった。
そしておもむろに麺を手繰る。スープの絡みもいい。
「橘さん、これはすごいですわ」と声をかけたことを、
いまでもしっかり覚えている。

それからまもなく自家製麺の波がやってきた。
だが、橘さんはその波に乗ることなく、
スープの改善に心血を注いでいたのである。

どんどんスープは進化し、豚も白金豚を使うようになる。
鶏も滋賀の川中さんが扱う淡海地鶏をいち早く取り入れたりした。
 
そして、「支店を出すぐらいの資金が要ったのですが、
製麺機を買うことにしました。
小麦は全部内麦にしました」との連絡があった。
快挙である。やはり麺の香りが違う。
噛んだときの味の広がりが強烈だ。
「とうとうやりましたね」とこのときも叫んでしまった。
 
1年ほど前、ついに移転のときがやってきた。
今福鶴見から西区新町。僕たちにはうれしいエリアだ。
ワンタンめん、つけそば、中華そばと連続して食べた。

鶏は淡海地鶏から比内鶏へ。
豚は白金豚から金華豚を経て鹿児島・霧島の黒豚へと。
またつけそばの麺は鮮烈な味わいであった。

「これは特別に分けてもらった内麦です」と。
「このあたりで落ち着きたいと思います」と橘さんは話すが、
まだまだ変化と進化を繰り返すと、僕は信じている。


【本日の店舗】
「カドヤ食堂」
 大阪市西区新町4-16-13 キャピタル西長堀 1F
 06-6535-3633


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2011年7月29日(金)

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