門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第68回
鮨 生粋

関西の寿司シーンは変化を続けている。
多種多彩なスタイルが現れてきた。
寿司飯に全く砂糖を入れず、
酢も赤酢を使う店もあれば、
「やっぱり関西の人たちには少し甘さが必要です」
と砂糖を入れる職人など、
食べる側も好みによって店を選ぶこととなる。

神戸は東灘にある「生粋」は、
江戸前のスタイルを標榜する寿司屋である。
店内も二度の改装を重ね、
相当すっきりというか凛とした雰囲気を漂わせている。

江戸前は、やはりマグロの扱いとコハダの締め具合が気になる。
ここではまずマグロのづけが出た。

醤油の香りとマグロが持つ鉄分の味わいが
見事な融和を届けてくれる。
つづいて中トロだ。

肌理の細やかさは繊細かつ味わい深いものであった。
そしてトロの登場となった。

これは香りも脂分の甘みも申し分なく、真打登場という感じ。
素晴らしい流れである。
「これはマグロ三兄弟ですね」
と僕たちは勝手に盛り上がっていた。

ご主人の福原大介さんは、
どちらかといえば多くを語らずというタイプで、
ネタの産地や調理法など最低限のことだけ話す。
その姿勢というかスタイルも、
こちらには心地よい響きとなっている。

マグロのあとにコハダが出た。
江戸前を意識しているという思いが伝わってきた。
そして新イカ、蛸の桜煮、アジ、
ウニ(2種類・赤ウニとムラサキウニ)と続いた。
そして新イクラは小さな丼だ。

じつは、その次に再び大トロを握りだした。
またまたマグロかと思っていると、
なんとそれを手巻きにして渡してくれたのだ。

たしかに大トロの脂分は半端ではない。
寿司飯との相性も優れているが、
そこに海苔を加えることで、脂分が生きてくるなと、
ご主人の技に唸ってしまった。
あとは、穴子をツメと塩の二種。

思うに自己のスタイルを確立させながら、
食べる側の喜ぶような演出が、
適度に散りばめられている。じつにうれしいことだ。


【本日の店舗】
「鮨 生粋」
 神戸市東灘区本山中町3-3-6
 078-411-1904


←前回記事へ

2011年9月30日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ