門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第69回
チッポグラフィア

「ネルドリップや自家焙煎というのが
あまり好きではなかったんです」と呟いたのは、
大阪・豊中にある「チッポグラフィア」という
“ブラジルをコーヒーと音楽で表現する店”の主・山崎雄康さん。


この言葉に僕は興味を抱いた。
コーヒー好きにはネル・ドリップ愛好家が多く、
自家焙煎に憧れる人も多い。かく申す僕もその一人であった。

「どちらのよさも分かるのですが、
なんか珈琲道のような感じがあり、
それにまつわる薀蓄というのが、
それらを遠ざけていたのでしょう」と加えた。
その説明を聞いて、納得というか安心した。
また山崎さんは「音楽が大好き。
でも音楽で食べてゆくのは大変、
だけど珈琲なら食べてゆけるかなと思ったんです」
とも話してくれた。
この台詞もじつに面白い。
ものごとを極めることは重要である。
しかしそのことだけに固執すると、他の世界が見えなくなり、
ともすれば他人からは傲慢と映ることもある。

山崎さんは脱サラ組だ。
ビジネスマンを15年経験し、カフェの専門学校で学び、
コーヒー関連の仕事に就く。
そこで出会ったのが「コーノ式」である。

円錐形のペーパードリップを世に広めた人の下で働いた。
「淹れてもらったブレンドが柔らかく、雑味もなく、
濃度もちょうどよかったのです」と当時の印象を述懐した。
独立は2005年である。

店内は焙煎機、ドリッパーなどイエローという色使い。

レコードとCDがどっさり置かれている。

いわゆるコーヒー専門店を想起させるものが極めて少ない。
またコーヒーのオーダー方式も独特である。
まずはメニューの中からカラーを選ぶ。
「アマレロ」黄色 太陽の味わい 浅めから中煎り。
「ヴェルデ」緑色 樹々の味わい 中煎りで
酸味と苦味のバランスよし。
「アズール」 青色 中程度から深煎りで苦味がしっかり。
次にカラーの中から、
山崎さんがつけたネーミングを頼りに好みを探ってゆく。

こんなパンキッシュなコーヒー店があっても、
なんの不思議もない。

【本日の店舗】
「チッポグラフィア」
 大阪府豊中市本町6-7-7
 06-6849-6688


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2011年10月4日(火)

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