門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第77回
珈琲アロー

毎月、空の旅をする。
全日空機内誌「翼の王国」で連載をもっているから。
阿蘇で取材を終え、熊本空港に向かう前に熊本市で
コーヒーを飲むこととなった。
阿蘇の住人から仕入れた情報を頼りに訪れたのが
「珈琲アロー」というコーヒー店だ。

住人の言によると
「色は麦茶みたいな感じなんです。
でも美味しくて、クセになるのです」と。
いわゆる飲み屋さんが立ち並ぶ界隈で店を構える。
カウンターのみ。
中で赤いベストを着たマスターがコーヒーを淹れていました。

コーヒー豆の貯蔵ビンからネルドリップに入れる。

豆の色と粒子の粗さが、
これまでコーヒーに抱いていたイメージと大きくかけ離れている。
あまりにも違いすぎる。まず色が極端に薄いというか淡い。
そして挽き方が実に粗い。そこに湯を注ぐ。
それは通常のネルドリップスタイルだ。

出来上がったコーヒーをポットからカップに移す。
その向こう側まで透き通って見える。

住人が「麦茶みたい」と表現したくなる気持ちが、
ここで理解できた。
口に含むと、色合いからは想像できない味わい。
だがコーヒーのコクを感じるのである。

マスターに「これは豆の焙煎の違いですか?」と尋ねると
「焙煎より、豆の質です。
みんな同じようなやり方ばかり。
もっと研究しなくては」との返事である。
コーヒー豆の品質がすべてを左右するとのことであった。
それにしても驚きである。
これまで相当コーヒーは飲んできたつもりであったが、
このタイプに出会ったのは初めての経験だ。
「私は一日に30杯ぐらいは飲みますが、
身体はいたって健康です」と。
なんとも不思議な経験をすることによって、
自分のコーヒーの世界が広がってゆく。
年中休みなく、毎日相当数のコーヒーを淹れ続ける。

一杯のコーヒー。たかがコーヒー、
されどコーヒーという言葉を、思い出していた。


【本日の店舗】
「珈琲アロー」
 熊本県熊本市花畑町10-10
 096-352-8945


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2011年11月1日(火)

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