門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第85回
蔦珈琲店

京都から東京に移住した先輩がいる。
職業はグラフィックデザイナー。
先輩が京都に帰ってきたときや、
僕が東京に出かけたときに情報交換も含め、
一緒にコーヒーを飲むことが多い。


京都では、最近河原町三条近くの「直珈琲」を訪れることが多く、
東京では「蔦珈琲店」だ。

京都の知り合いのコーヒー店店主が
「東京だったら、蔦珈琲店がオススメです」と教えてくれ、
この先輩と行ったのが、一年前ぐらいだ。


店名どおり、通りからエントランスまで
蔦が絡まっている光景が素敵だ。

このわずかな距離を歩くだけでも、
この店はなにか特色があると感じてしまう。


店内は長く伸びたカウンターと小さなテーブル席。
また大きな窓があり、
そこから庭園が見えるのもユニークな設計である。
調べてみると、ここは日本武道館を設計した
山田守さんという建築家の私邸一階を改造して
珈琲店にしたというのだ。

僕はマスターの動きなどを見たいのでカウンターに座る。
たまたま小腹が空いていたので、
メニューを見ると「マーガリントースト」というのがあった。
わざわざマーガリンと表記するのが面白く、注文した。


そこにはトーストが2枚、サラダがたっぷり、
そしてヤクルトがのっていたのだ。

「ヤクルトですか」と声を出すと
「これは身体にいいですし、消化も助ける」と
マスターが応えてくれたのであった。
まずヤクルトで喉を潤し、それからトーストに移る。
サラダもシャキッとしたクレソンの元気がいい。
ホントにこれは身体が元気になる一皿である。


コーヒーは結構深煎りだ。

トーストやサラダのボリューム感を考えれば、
やや濃い目のほうがいい。
苦みと酸味のバランスがよく、雑味を感じることがない。
開店以来の雰囲気と時間の流れが、
そのまま残っているような珈琲店である。
今の時代、こんな味わいのある珈琲店を作るのは
難しいかもしれない。


【本日の店舗】
「蔦珈琲店」
 東京都港区南青山5-11-20
 03-3498-6888


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2011年11月29日(火)

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