門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第92回
オテル・ド・ヨシノ

「オテル・ド・ヨシノ」のシェフ・手島純也さんの肩書きは
吉野組若頭料理長とある。
吉野組とは、
パリ「ステラマリス」のオーナーシェフ・吉野建さん系列のこと。
パリと東京にレストランを持ち、その支店が和歌山にある。
そこを任されているのが手島さんということになる。


手島さんの作る料理は、
時代と逆行しているのではないかと思えるほどクラシックである。

「僕はこれまで先輩が作ってこられた料理に
チャレンジしてみたいのです。
同世代の料理人が目指している方向性とは違うかもしれません」
と胸を張って話す。


僕は何度か彼の料理を食べており、
圧巻はパイ包み焼である。

一度目は、中にアワビとリードヴォとフォアグラが入っていた。
3つの食材の持ち味を生かし、
それぞれの旨みをパイ生地の中に閉じ込める。
それを切ったときの濃厚な香りと、
舌全体をがっつり覆いつくす味わいには、驚きと感動を覚えた。


二度目はジビエのパイ包み焼であった。
中には鴨、雉などをミンチ状にして、
そこにもフォアグラが入る。

切った状態でサーブされ、
横に添えられた内臓も含んだソースの濃さと相まって
「これぞフランス料理だ!」と叫んだ者まで現れたのだ。


パイ包み焼は、じつに高等な技術を要する料理である。
パイ生地をどこまで焼き切ることができるか。
味見をすることは不可能である。
あえて、それに挑戦する手島さんの
ファイティング・スピリットにも拍手を送りたくなった。

とはいえ、ソースはバターの使用を控えるなど、
現代人に合った手法を取り入れることも忘れない。
やはり、料理を食べるのは今を生きる人たちであり、
その生活様式に合わせる必要がある。

和歌山の魚に惚れて、この地を選んだシェフ。
このポリシーをいつまでも失うことなく
料理を作り続けて欲しいものだ。


【本日の店舗】
「オテル・ド・ヨシノ」
 和歌山市手平2-1-2 和歌山ビック愛12F
 073-422-0031


←前回記事へ

2011年12月23日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ