門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第93回
盆栽自転車店

「東京に『盆栽自転車店』という店があるんです。
知ってますか」と東京在住で関西出身の先輩に聞くと
「それは何の店やねん?」という返事である。
「なんかエスプレッソを飲ませてくれるらしいですよ。
場所は千駄ヶ谷です」
「そしたら渋谷のハチ公前で待ち合わせしよか」と、
話がまとまった。
渋谷で落ち合い、地下鉄の北参道駅で降り数分歩く。


道路に面して置いてある「盆栽自転車店」
というディスプレイが目に飛び込んでくる。


外から見ると、店内には自転車が並んでいる。自転車屋である。
店内に入ると、入口近くに2テーブル、
4席が用意されている。
たしかにここでコーヒーが飲める。

エスプレッソを注文する。
まずは大きな砂糖入れが届く。これはアレッシィのものだ。
かつてイタリアのカフェではよく見たものだ。
しかし、現在は衛生上の問題から、
この器は使用不可となった。
この器だけではない。
砂糖をスプーンで入れる行為自体が許可されないのだそうだ。

「この器いいですよね。でもイタリアではダメなんです」
と僕が話すと、
先輩は「なんでアカンねん。すごくいい感じやないか」
と問いただす。
理由を説明するが、納得のいかない様子だ。
エスプレッソは、苦みとかすかな甘みのバランスが秀逸である。
砂糖の量も自分で調整できる。
そしてこのデザインが素晴らしく美しい。
まさに使ってこそ美しさが生まれてくるという感覚だ。


「コーヒーを飲めるのは、このスペースだけですか?」
などスタッフに質問すると
「そこがメインのお席ですが、
中の大きなテーブルで
自転車のことを話しながら飲まれる方も結構おられます」
との説明があった。然り。
自転車もコーヒーも嗜好品である。
それを語らう人間が集まると、
その横にコーヒーがあってもなんら不思議ではない。


自転車フリークが集まる。

またコーヒー好きが集まってくる。
そこで、このレベルのエスプレッソが飲めるのはうれしいことだ。


【本日の店舗】
「盆栽自転車店」
 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-11-8
 03-3497-8885


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2011年12月27日(火)

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