門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第106回
トゥールモンド

フランス料理を意識して食べ始めて何年になるだろう。
30年とはいわないまでも、
それに近い歳月フランス料理を食べ続けてきた。
そこで幾人もの驚きを与えてくれる料理人に出会った。
大阪・土佐堀にある「トゥールモンド」の
オーナーシェフ高山龍浩さんも、その一人である。
辻調理師専門学校のフランス校を卒業し、
大阪のレストラン、ホテルで腕を磨いたのち
堀江のカフェでシェフを務め、時代の空気感をつかむことを学ぶ。
そして独立して10年近い月日が流れる。

そのなかでこんなに変化と進化を繰り返している料理人は珍しい。
オープン当初の店内はカフェ然としていながら、
しっかりしたフランス料理を供すことで注目を集めた。
値打ちある確かな料理、
良心的な価格で比較的若いフレンチファンが押し寄せた。
シェフが20代のときだ。

そこからの変貌がめざましかった。
先輩料理人(それもフランスに限らず和食や鉄板、焼き鳥など)と
交流を繰り返し、相当熱心に食べあるきを続けた。
あるとき数ヶ月の休みを取り、
店内を改装、本人はフランスへ短期修業にでかけた。

改装後、ランチは
従来のガツンとしたビストロ系の料理をメインに、
ディナーはコース一本に絞り、
シェフがその時考える料理を作った。
当時は和の食材をいかに取り入れるか
ということに心血を注いできたが、
最近は、フランスの古典的な料理を再構築する
ベクトルが加わってきた。


ある日のアミューズはタマネギのローストと
トリュフの組み合わせ。


足赤海老は低温の油でコンフィにして数種のソースをプラス。


パイ包み焼きは豚とトラ河豚の組み合わせと洒落心もみせる。
ヒゲダラにはクラムチャウダー風のアサリのソース。


メインの蝦夷鹿の美しい火入れには、
フレンチが好むジビエでありながら
今の加熱方法を見事に取り入れているのだ。

ジュではなくソースをいかに考えるか、
これを重視しているのかがよく分かる料理の数々であった。
今年36歳、これからの進化が益々楽しみだ。

【本日の店舗紹介】

「トゥールモンド」
 大阪市西区土佐堀1-4-2西田ビル 1F
 06-6444-8819


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2012年2月10日(金)

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