門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第107回
アラビヤ珈琲店

大阪・ミナミ。
法善寺の水掛不動さんに向かう参道、
といっても飲食店が軒を並べる通りで、
そこに古いコーヒー豆の焙煎機が置かれている。
その上に「WORLD COFFEE アラビヤ」という文字と
威風堂堂とした男性のイラスト、
「1951」なる数字が鎮座する。

そう、開店60年を迎えたコーヒー店である。


いまは二代目のマスター・高坂明郎さんが、
焙煎から抽出まで手がける。

開店当時からのお客様はまだおられますか?と聞くと
「少なくはなりましたが、
親子二代、三代というお客さまはかなりおられます」
との返事である。
ミナミで遊んできた常連客が多い店でもあり、
また二代目の人懐っこいキャラクターに惹かれる若い人たちも
近頃増えてきているようだ。
すぐ近くには松竹座があり、馴染みの役者が劇場入りする前に、
コーヒーを一杯という姿もよく目にする。

大阪のミナミは関空に近いせいもあり、
アジア系の人たちがよく目立つ。
「この間も、韓国の料理学校の先生が生徒を数人連れて、
コーヒーの焙煎と抽出を見せてやって欲しいと言われました。
焙煎は別の場所でしているので
お見せすることはできませんでしたが、
抽出だけはきちんとお伝えしました」と。
それもあらかじめ予約があったわけではなく、
突然の来訪であったという。
それになんなく応えられる、
という高坂さんのホスピタリティと
コーヒーに対する愛情は並々ならぬものがある。


基本のブレンドコーヒーを頼む。

濃すぎるというのではなく、むしろ軽やかでほっとする味わい。
そんなコーヒーを飲みながらマスターと
近況を報告しあうというのが、
僕のこの店の楽しみ方となっている。
気がつけばカウンターの端や後ろのテーブル席に知り合いがいて、
そこでまたしても近況報告をするということもしばしばだ。

こういったコーヒー店を街に数軒持っていると、
その街を訪れる楽しみも増えてくるというものだ。


【本日の店舗紹介】

「アラビヤ珈琲店」
 大阪市中央区難波1-6-7
 06-6211-8048


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2012年2月14日(火)

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