門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第108回
京天神 野口

昨年初夏に開店した京都にある「京天神 野口」だ。

ご主人の野口大介さんは
「一軒家の町家で料理店をやりたかったのです。
物件をいろいろ探していると、
結局この北野天神道で見つかったのです」と。
天神道とはまさに文字通り、
かつては北野天神さんにお参りをする参道であった。
野口さんは「和久傳」出身で、
昨年の5月までは、三条御幸町にある
「御幸町つばき」の料理長を務めていた料理人である。
店内は、すっと伸びた欅のカウンター、土壁に網代の天井など、
ぴしっとした空気感が漂っているが、
野口さんはいたってざっくばらん。
この雰囲気がじつに心地がよいのだ。


さて料理は、まずは造りだ。
この日はヒラメ、穴子、ヤリイカである。

ヤリイカに入った包丁の冴え。
イカの甘みがぐっと引き立っているのだ。
切ることによって料理となる。
その職人の技が堪能できる造りであった。
季節の素材を活かした椀が出る。秋口は鱧と松茸の饗宴である。
焼き白子も登場。毛ガニとボタン海老の美しき出会いも楽しんだ。


またここでは、すでに定番となっている鯖寿司がある。

まず寿司飯に醤油が混じっている。
脂ののった鯖を受け止めるためだ。
脂分と醤油の酸味がいいバランスだ。
この鯖寿司は海苔で巻き、掴んで食べる。
海苔の香ばしき香りは鯖にいい刺激を与える。


そして、なんと付けあわせが鴨ロースなのである。
一瞬驚きもしたが、食べてみると納得だ。

これは値打ちある鯖寿司である。
料理には、プレゼンテーションが大事だと再認識した。


締めのご飯は炊きたてを供する。

この日は地鶏とごぼうの炊き込みご飯である。
ごぼうの香がきいている。じつにほっこりする味わい。
コースの流れも見事なものだ。
食べ手がなにを、どれだけ、そしてどのタイミングでサーブするか、
この大切さを熟知した野口さんならではの技が随所に光っている。
ホントに京都の和食は奥が深い。


【本日の店舗紹介】
「京天神 野口」
 京都市上京区天神道上ノ下立売上ル西側
 075-276-1630


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2012年2月17日(金)

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