門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第112回
土山人 北浜

大阪の高麗橋に数年前まで「三越」があった。
この界隈は証券取引所もあり、
大阪では金融の街という印象が強い。
かの「吉兆」本店も高麗橋にある。


その近くにあるのが「土山人」という蕎麦屋。

最初は芦屋でスタートした。
ご主人の渡邊さんは、もともと雑貨屋を営んでいた人物だ。
蕎麦好きが高じて、ついに自ら蕎麦屋の店主となった。
「昔ペンション、今蕎麦屋」と言われるぐらい、
ビジネスマンから蕎麦屋への転身は多い。
だが、大きく2つのタイプに分かれる。

1つは蕎麦道を究めるようなスタイルである。
比較的このタイプが多く、店内もかなり凛とした雰囲気が漂い、
メニュー数も少ないのが特徴。
一方、この「土山人」に代表されるのは、
もう少しゆるやかな空気感を漂わせ、メニュー数も多い。
蕎麦だけを味わうというのではなく、
蕎麦と酒、少しの料理も味わってもらいたいと考えるタイプだ。

まさに渡邊さんは、
蕎麦屋で酒の肴を積極的に供した魁の一人である。
この日は、ランチ時に訪れた。蕎麦は3種類ある。

「せいろ」は殻をむいた
蕎麦の実を細かく挽いた喉越しの良い蕎麦。
「田舎」は国内産の玄蕎麦(殻付きの蕎麦の実)を粗く挽いた
風味の高い蕎麦。
「太切り」は温かい蕎麦や鴨汁蕎麦、
かき揚げせいろなどに合う太い蕎麦。


僕はせいろに小さいかき揚げ丼をプラスした。
せいろは、喉越しである。
噛むというより喉を通るときの食感と、
その後、鼻にぬける香りを愉しむのだ。
まさに快感中枢を刺激される蕎麦であった。

午後からの仕事を頑張るためにはエネルギーが必要だ。
それは脂分と旨みである。


その役割を果たしてくれるのがかき揚げ丼。

かき揚げは、単一食材の天ぷらよりも技術を要する。
種々の材料が混ざり合った塊の中心部まで
火を入れなければならない。
そのためにそれぞれの素材に
どれだけ油を均等に回すことができるかが、
完成度の高さにつながる。
ここのかき揚げはそれを見事にクリアした一品である。

せいろとかき揚げのコンビは、
蕎麦屋ならではの組み合わせだ。


【本日の店舗紹介】
「土山人 北浜」
 大阪市中央区伏見町2-4-10
 06-6202-0069


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2012年3月2日(金)

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