門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第116回
西洋厨房 いとう

調理師学校の先生が独立し、
レストランを経営する人が増えてきた。
料理を作りお金をもらうのと、
お金をもらって料理を作るのでは大きな差がある。

京都にある「西洋厨房いとう」の
オーナーシェフ・伊藤努さんもその一人だ。
伊藤さんは調理師学校卒業後2年間レストランで働き、
その後、学校に戻り先生として13年間教鞭に立ち、
独立を果たした人だ。
独立して8年が過ぎる。
「オープンして1年はビストロでしたが、
今のスタイルにして7年です」と。

この「今のスタイル」というのが興味深い。
「腕がないから、いい食材を使います」と
伊藤さんは言い切るのだが、
カウンターに登場する料理の質は極めて高く、
舌は喜び、心は踊る。
「夜のメニューとは異なるランチもやっていたのですが、
今は基本昼も夜も同じ料理を作っています」とも。
徹底しているのだ。


コース仕立てで、前菜としていつも供される野菜の皿がある。

旬を迎える野菜の産地(京都市内で3箇所)から
仕入れたモノを盛り付ける。
これが大地の恵をたっぷり味わえるのだ。
この一皿で伊藤さんの料理にかける哲学が
理解できたような気分となる。
それほどインパクトのある料理なのだ。


あとは前菜がもう一皿、魚、肉と進み、
どの皿にも野菜がきっちりと盛り込まれている。


とりわけ自然食を謳うわけではなく、
真っ当なフランス料理を供するのだが、
気持ちはすごくたおやかになり、
胃袋に対しても非常に優しい。


この日のスズキも火入れは絶妙で、
生に近い部分をわずかに残し、しっとりと仕上げてゆく。

ソースも甲殻類の殻から取った結構濃厚な味わいだが、
切れ味がすっきりとしていてスズキの持ち味が、
上手く引き出されている。確かな技術があってこそ、
完成する料理なのだ。

一人ですべてを仕切る。
「このほうが楽なんです。
人件費よりもエエ食材にどんどんつぎ込みます」
と笑顔で話す伊藤さんのスタイルである。


【本日の店舗紹介】
「西洋厨房 いとう」
 京都市東山区古門前通石橋町307
 075-533-0500


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2012年3月16日(金)

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