門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第118回
華祥

京都に「華祥(かしょう)」という中華料理店がある。
開店は平成14年。

場所は百万遍交差点の西北ビルの2階、小さな店だった。
昨年少し北の田中里ノ前町交差点、
東北角にある3階建ての店舗に移転した。
ご主人の田口茂雄さんは、
現代の名工を受賞された輝かしい経歴の持ち主。

彼は50歳代半ばで、それまで務めていたホテルを辞し、
ラーメン中心の小さな店を始めた。
最初は学生相手の店であったが、
その味はすぐに評判を呼びメニューもどんどん増えていった。
といっても1000円を超すメニューはほとんど無し。
繁盛店となり予約も取りにくい店となった。

転機は息子さんが厨房に立つことになった時だ。
学校を卒業後、一旦他所で勤め、
基礎を覚えたところで店に入った。そして移転である。
1階はカウンター、
2階はテーブル席で宴会もできるようになった。


1階のカウンター内の厨房では、2人が鍋を振る。

「マスター」「チーフ」と、2人はそれぞれ、そう呼ばれている。
マスターは片手の北京鍋、チーフは両手の広東鍋と
2人はスタイルの違う鍋を並んで降っている。
その姿をカウンター越しに眺めていると、
この店は安泰だなと感じてしまう。
不必要な言葉は喋らず、短い指示がでるだけで、
厨房内は見事に無駄なく動いている。


この日は、ランチセットをお願いした。
あんかけ焼きそばセット。

ザーサイと唐揚げ、白ご飯が付く。



チーフがそばを一部カリッと焼き目が付くように焼く。
ちょうど焼きあがったタイミングで
マスターが上からかける具材が仕上がってくる。

この「あうん」の呼吸は確実に味に反映してくる。


唐揚げもしっかりと味を含ませているので、
ご飯にぴったりだ。

田口茂雄さん、業界では重鎮である。
しかし、そんなことをまったく表に出さず、
淡々と仕事を続ける姿には感動を覚えるのであった。


【本日の店舗紹介】
「華祥」
 京都市左京区田中里ノ内町41-1
 075-723-5185


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2012年3月23日(金)

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