門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第122回
若木

大阪・江戸堀にある蕎麦屋「若木」。

昼時の「ひるげ」というセットが人気だ。
おかず一品とかやくご飯、そして好きなそばを選ぶ。
ビジネスマンにとって、そば一杯では少し物足らない。
かやくご飯がつくとちょうどいい塩梅となるのだ。

ここはご主人の大同さんが、自ら蕎麦を打つ。
以前は「わかさ」という名前で麺類ならなんでもあれ
という店であったが、
大同さんが今のスタイルに変えたのである。
じつは大同さんとは長い付き合い。
お互い若い頃に、とあるフランス料理店で顔見知りとなり、
飲食店の情報交換をしたものだ。
そのフランス料理店も無くなり、お互いの仕事も忙しくなった。

何年か前に、「若木」となり、
またときおり訪ねることとなった。
いつもは「ひるげ」ばかりなのだが、
つい最近食した「河内鴨とクレソンの鍋」の
クォリティの高さには驚いた。
鍋は出汁と具材のバランスが重要だ。
まず、出汁が繊細である。
そこに河内鴨の脂身から出る旨みがどんどん溶けこむ。
これがたまらぬコクとなってゆく。
「河内鴨に出会ったときにこれは絶対に使いたいと思いました」
と大同さん。
河内鴨は日本で初めて合鴨を飼育したとして知られる大阪の名物。


コクのある出汁にクレソンを入れる。

しなっとなる前に食べる。
シャキッとした食感とほろ苦さと
出汁の旨みのバランスが素晴らしい。


途中で、そばがきを注文し、それを出汁で食べる。

初めての経験だが、このそばがきには確実にやられた。
ねっとりした歯ごたえに思わず頬が喜ぶ。


再び河内鴨に戻る。

少し黒胡椒を振るとその旨みが倍増するのだ。
この鍋に一品、蕎麦がついて
3800円は大いなる値打ちの献立である。
蕎麦屋の新たな挑戦で、
これはここの名物になると信じている。

【本日の店舗紹介】
「若木」
 大阪市西区江戸堀1-8-24若狭ビル1F
 06-6441-4149


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2012年4月6日(金)

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