門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第128回
江戸正

何年前のことだろう。
坂東太郎という存在を知った。
それまでは利根川のことだと認知していた。
筑後川が筑紫二郎、吉野川が四国三郎という異名を持つ。
だが、ここで知った「坂東太郎」は鰻のことであった。
正確には「うなぎ坂東太郎」と呼ぶ。
養殖鰻なのだが、限りなく天然に近い育てられ方をしている。

その坂東太郎を供する鰻屋が京都にある。

五条堺町を少し北上したところだ。
「おそらくこの鰻をつかっている店で、いちばん西じゃないですか」
とご主人が語ってくれた。
蒲焼と鰻丼を注文する。
「少しお時間いただきますが」と。
注文が通ってから鰻を開き、蒸しをかけ、焼くのだから
時間がかかるのは当然のこと。


鰻がでてくるまで、この店の名物・烏骨鶏の卵焼きを食べる。

コクがあるというか濃厚なので、これは名物になりうる味だ。
紅芯大根のおろしがよく合う。


蒲焼が届いた。

色艶が素晴らしい。口に入れる。
はらりと崩れながら、鼻孔に香りが抜けてゆく。
旨みはたっぷりあり、脂っこさを感じない。
すきっとした感触。白いご飯との相性も抜群だ。

白いご飯と出合うことで鰻の持ち味も引き立てられる。
蒲焼の本領発揮である。


鰻丼も少しいただく。

これは白いご飯にタレがかかっている。
このタレを含んだご飯が旨い。
これだけでも食べ進むことができると思ってしまう。
鰻と一緒にかきこむ。
まさにかきこむ感じで食べるのが、鰻丼の醍醐味である。
鰻、ご飯、タレの一体感を味わうのだ。
鰻丼か蒲焼か、どちらが好きかは迷うところだ。
昼間ならがっと鰻丼をかきこむのもよし。
夜なら蒲焼でゆったりというのも捨てがたい。

ともあれ「うなぎ坂東太郎」という鰻は本当にあっさりしている。
その味わいを知ると、また訪れたいという気分になる。
一緒に供された胡麻豆腐の味わいもまたすっきりとしていた。


【本日の店舗紹介】

「江戸正」
 京都市下京区堺町通五条上る俵屋町224
 075-351-9371


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2012年4月27日(金)

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