門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第140回
天平


いまや全国的にも知られる、大阪のひとくち餃子。

ホントに一口でぺろりと食べられ、
皮はパリパリ、そしてモチっと焼かれた
ひとくち餃子の発祥店が
大阪・北新地の「天平」だ。

昭和30年に創業し、以来スタイルを変えずに営業を続けている。

壁に書かれたメニューは
「ぎょうざ」「ビール」「つけもの」の3種のみ。
もちろん飲み物は用意されているが、
基本はこの3つのメニューで60年近く営みを続けてきたのだ。

僕がこの店を初めて訪れたのは、おそらく40年ほど前のこと。
同級生の祖母が北新地で店を構えていた。
その同級生の父親に連れてきてもらったのだ。


小さな餃子を口の中にほりこむ。
カリッとしたあとに肉汁が広がり、ニラの香りが続く。
「旨い」と思わず言葉が飛び出した。
それまでの餃子は中華料理店で食べる皮の厚いものであったので、
その驚きは半端ではなかった。

当時は、創業者のお母さんが餃子を包み、
息子さんが焼き、女性がサービスにあたるという形態であった。
いまは男性が包み、もう一人の男性が焼く。
それも一度に100個入る焼き台一つで。

いまは最初に「おひとり20個ずつ焼きましょうか」
と声をかけてくれる。
そこからスタートして、足りなければ追加するのだが、
ほぼ20個で満腹状態を迎える。
かつては40個ぐらいぺろりと平らげていたような気がする。


今回一緒に食した中華料理店のオーナーシェフは
「懐かしい匂いがする。それは豚の脂ですね。
これは美味しいし、インパクトがある」とえらく興奮していた。
そして
「このメニューだけでずっとやり続けているのはすごい」
とつけ加えたのであった。

この種のひとくち餃子は、いろいろな店が作るようになったが、
この形の美しさ、焼きの香ばしさなど
「天平」が僕の基準となっているので、
ときおり訪れたくなるのだ。


【本日の店舗紹介】

「天平」
 大阪市北区曽根崎新地1丁目8-12
 06-6341-1972


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2012年6月8日(金)

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