門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第146回
北新地 弧柳

大阪の北新地。
ここは東京の銀座、京都の祇園と並ぶ夜の歓楽街である。
社交場という言葉が似合った時代もあった。
もちろん、現在でもその匂いは残っているが、
北新地は、昼間営業もする店が多くなり、
またカジュアルな雰囲気の飲食店も増え、
空気感は変わってきたのだ。

そんな中に、ミシュランガイド三つ星の割烹
「北新地 弧柳」がある。

カウンターとテーブル席に分かれる。
カウンターに腰を落ち着けた。満席だ。
同行者は、料理人の男性。
隣りに座るビジネスマンとおぼしき人物は、
どうやら関東からのお客のようだ。
活気にあふれている。

先付けは、泉南のとびあら、能勢のクレソン、白アスパラガス、
白子のピュレなど産地の説明もしっかりあり、
食べ手に安心感を与えてくれる。


二品目の先付けは金針菜の蕾のごま味噌和え。
ごまの香りがいい仕事をしている。


造りがくる。この供し方が迫力あり。
折敷に数皿並ぶ。それぞれに刺身が並ぶ。
舞鶴のトリガイ、マコガレイ、マグロ、関のイサキ、
アオリイカである。


マグロには卵の醤油漬け、アオリイカにはもろみなど、
各皿に違った薬味が添えられている。
見た目にも楽しく、またそれぞれ味も異なるのがうれしい。
造りをどうサーブするかは、
今後の和食店が抱える課題かもしれない。

大阪千両茄子と一寸豆、そこに毛蟹を合わせるなど、
じつに楽しい献立が続く。


「思っていた料理とは、かなり違いますね」と同行者はいささか驚いたようだ。
やはり大阪の三つ星は京都のそれと随分違う印象を持ったようだ。
自由度が高いと感じたのだ。

主の松尾さんが、カウンター内で牛肉を調理する。
そこに貝塚の早生タマネギのすりおろしをたっぷりかけた。
これには僕も驚き、松尾さんは、なにものにもとらわれず、
自らが旨いと思う皿を供しているのだと思った。
それが大阪料理の流儀なのかもしれない。


【本日の店舗紹介】

「北新地 弧柳」
 大阪市北区堂島1-5-1 エスパス北新地23-1F
 06-6347-5660


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2012年6月29日(金)

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