門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第150回
ほうば

大阪・天満に『ミシュランガイド大阪』で
一つ星の韓国料理店『ほうば』という店がある。
韓国料理と書いたが、
僕はその領域を超えた存在だと思っているのだ。

とはいえ、おまかせ料理のスタートはナムルと決まっている。
毎回内容は変わるが、ほぼ15種類は揃う。

金針菜、セリ、韓国カボチャ、クレソン、ナスなど
野菜の滋味を感じながら食す。
この始まりで、一気に気分が高揚する。
これからが『ほうば』の世界である。


「チヂミです」と供された一皿は、
万願寺唐辛子に魚介類を詰めたものと、
とうもろこしとエビのセット。

これまでのチヂミのイメージが大きく変わってしまう。
創造的な料理とは、このようなことだと頷くのであった。


つぎはアワビのお粥である。

テーブルにその献立が届いた瞬間「おお、すごい。これがお粥?」
と歓声が上がった。取り分けて食べる。
アワビは的確な火入れで、磯の香りと濃密な味わいを放つ。
お粥は、まさにリゾット。
「これはアルデンテやね」と言葉が飛ぶ。
アワビの肝を合したお粥の豊潤な味には
「これは韓国料理と呼んでいいのか迷うね」
「リゾットとも違う」などなど。

「蔘鶏湯をこれから炊きます」。
秋田比内鶏を使った蔘鶏湯だ。迫力あり。


期待しながら食べたのがキンキの煮付けである。
皿の色はかなり赤い。辛さを連想する。

しかし、一口食べると思わず口元がゆるむ。
キンキの旨みをしっかり感じる。
そこにダシというかタレの味わいが微妙に作用する。
その液体をすっかり吸い込んだ大根の美味しさには
舌を巻いてしまった。
貝のエキスも威力を発している。
食べ終わったところで、小さなご飯が運ばれる。
皿に残った液体をご飯にかけると、美味なるミニ丼の完成だ。
心憎い演出というか、気遣いである。

締めの蔘鶏湯の味わいは、言うまでもない。
同席した仲間の笑顔が、
この店の実力を物語っていたのである。


【本日の店舗紹介】

「ほうば」
 大阪市北区天神橋5-3-10
 06-6353-0180


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2012年7月13日(金)

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