門上 武司

「一杯の珈琲から一皿の満足まで」
  門上武司の食コラム

第162回
お料理 宮本

いま、大阪の和食界で大きな話題を投げかけているのが
「お料理 宮本」という割烹だ。
主は法善寺の「本湖月」でみっちり修業を重ね、
奥様は日本橋の「藤久」で料理人として経験を積んだ。
その2人が満を持して独立したというわけ。
場所は大阪の南森交差点がすぐのところ。
大きなマンションの1階だが、
そんな背景を感じさせることのない建築。
外観はしっとり、店内はゆったりとしたカウンター8席のみ。
これが掘りごたつ式で、
座椅子もついて非常に過ごしやすい設えとなっている。

奥様は、着物姿でサービスに徹し、主が裏の厨房で料理を作る。
なんといっても料理の事がわかる。
だから一皿ひとさらの説明が極めて適確である。
これは食べ手にとって大きな安心感へとつながってゆく。

料理は焼なすにウニ、
そこに醤油ジュレがかかったものから始まった。
スタートからしっかり旨さを感じる。


椀物は甘鯛と冬瓜。

これが素晴らしい。
出汁は、飲み進むにつれ具の味わいも加わり、
次第に濃くなってゆく。その変化が楽しい。
椀物は和食の華となる一品。この安定感は見事である。

造りは鱧だ。

軽く焼き霜にして甘みをぐっと持ち上げている。
皮目だけを炙り、余分な脂分を飛ばし、
それを甘みに変えているのだ。


つづく焼物がダイナミックであった。
笹の葉っぱが重なりあった上に鮎がずらりと並ぶ。

かすかに煙が立ち上る。
演出としても見事なものだが、香りも楽しめる。
頭もカリッと焼け、一尾まるまるペロリと食べてしまう。
この焼き方がポイントだ。

ご飯前の焚き合せ。
揚げ湯葉に万願寺唐辛子、白ずいきである。
このなんとも優しい味の含ませ方。
盛り上がった気分をこの一品で落ち着かせる。
フラットになったところで白ご飯を迎える。
なんとメリハリのきいたコースの組立であるかこと。
主はまだ31歳を超えたところ。
そのあたり塩梅のつけようが見事である。
これから変化が愉しみだ。


【本日の店舗紹介】

「お料理 宮本」
 大阪市北区東天満2-10-28
 06-6809-6990


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2012年8月24日(金)

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