中国って、本当のところどうなの?

第197回
歪みが露呈しつつある中国の教育制度

1980年代初頭、
先富論(先に富める者から富めばよい)を旗印に
経済改革の方向に向かった中国ですが、
「富めるものを創出する」という面においては、
一応の成功を収めつつあるようです。

しかし、先行して富める人々を作り出し、
経済の社会主義的自由化やその成長を謳歌している反面、
貧しい人々はそのまま置き去りにされてきてしまいました。

近年になっても、その貧富の差の拡大は激しく、
2005年の地方の年収は3000元強というレベルにとどまっています。
こうした低収入の地域では、
子供を学校に通わせることもままならないばかりか、
病気になっても病院に行くことすら出来ない人々が
たくさんいるのです。

本来の先富論の発想では、
「先行して豊かになった人々が、
貧しい人々の暮らしをてこ入れする」
という大義がありました。

しかし、蓋を開けてみると、富めるものは益々富み、
貧しい人々はそのまま放置されてしまっており、
貧富の差の拡大が大きな社会問題として
浮き彫りになってしまいました。

貧富の差の拡大により、
中国の官製マスコミでは大きく報道されないものの、
地方での抗議活動は年々激しさを増しており、
首都である北京にも抗議にやってくる者が増えてきています。

本来、こうした抗議活動は役所の許可が必要なものですが、
生活に逼迫した貧しい人々は首都である北京市にも
抗議活動をしにくる件数が増えているそうです。

こうした社会の底辺に属する多くの人々の鬱憤に対し、
危機感を抱いた中国政府は、
2010年の成長目標の中に平均教育年数の引き上げと
地方の生活状況の大幅な改善を盛り込んでいます。

中国留学・北京事情・中国の大学-加藤嘉一

中国でも義務教育は小学校6年・中学校3年の
合計9年間なのですが、
それすら終えられない未就学児童が多く存在するために、
2005年の平均教育年数は8.5年となっています。
2010年には、それを義務教育年数の
9年に引き上げるとのことです。

しかし、無理やりに大学などの定員を増加させたために、
都市部でも新卒者の失業者が
年々目だってくるようになりました。

2002年の中国の大学卒業生数は145万人だったのに対し、
5年後の今年、2006年には413万人に激増するそうです。

中国留学・北京事情・中国の大学-加藤嘉一

好景気に沸きかえるかのような中国ですが、今年の新卒者のうち、
100万人は新卒失業者になると見る向きもあります。

就業経験が無く即戦力にならない新卒者に対して、
受け皿となる需要が圧倒的に不足しているのです。


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2006年6月1日(木)

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