第269回
歩行者による車道の横断事情
諸外国から中国に来て驚くことは多くありますが、
中国人の交通ルールに対する意識の違いも
その一つといえるでしょう。
自動車を運転するプロのタクシー・ドライバーや
バスの運転手といえども、
日本の運転手のようにマナーが良いことはまれで、
大抵は自転車に乗っているような感じの
大雑把な運転手が大半です。
また、自動車ドライバーが自転車感覚で
乗用車を運転している横で、
歩行者のほうも車道に対して
「車が走る場所」という意識が低いようにみえます。
もちろん、横断歩道や信号は中国にも存在しますが、
多くの歩行者は「信号の色」を殆ど気にしていません。
「渡れるときに渡る」そして「渡りたいときに渡る」
中国ではこれが多くの市民の中にある交通ルールです。
さすがに監視の厳しい地下鉄などでは
線路の上を歩く人は殆どいませんが、
地上の鉄道の路線の上に歩行者が往来する姿を見ることは、
中国では全く珍しい光景ではありません。
「電車が通っていなければ、そこも歩道」
こうした野生的な感性が
まだ少なからず中国人の一部の人々にはあるようです。
車道や鉄道を歩けるときに歩く、
これは中国の自動車の交通事情をみていると、
ある意味正しい選択のような気もします。
というのは、中国では歩行者よりも
車の方が偉そうな顔をしていることが多いのです。
横断歩道などでも、信号がない横断歩道では、
歩行者がいようとも車はなかなか停まる気配を見せません。
こうした状況では、歩行者のほうが車の波をかいくぐり、
車道を横断するしかないのです。
歩行者をいたわる交通マナーの良い運転者もいるにはいますが、
マナーが悪い運転手が圧倒的に多く存在するために、
中国全体の交通マナーは、世界最低水準の悪さを誇ります。
近年、毎年10%近い経済成長を維持している中国ですが、
人々の生活習慣やマナーといった人々の内面は、
経済の成長と比例して洗練されつつあるわけではありません。
どうしても、お金だけ先に手にしてしまった
マナーの極めて悪い荒削りな人々が多く徘徊している、
それが今日の中国の状況だといえるでしょう。
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