第276回
731部隊遺跡での意外な反応
日本軍の特殊部隊である第731部隊の
細菌兵器開発とその人体実験による中国側の被害は、
とても看過できる内容のものではありません。
史実の大まかなところを伝え、
将来的な過ちを防止するという
731部隊遺跡の大義名分は、
細かい数字などの信憑性はさておき、
それなりに果たされているのかも知れません。
さて、日本・中国共に、生きている人々で
第2次世界大戦を経験している人は
少なくなり続けています。
また、戦争の体験者といえども
戦争の意思決定に関わるポジションにいた人々は
既に殆どが他界しており、
まだ生きている人々の大半は
日中共に「戦争に巻き込まれた人々」であったと
言えるのではないでしょうか。
すでに戦争の意思決定に関わった人々が
日中双方に殆どいないにもかかわらず、
過去の歴史問題などを軸にして
依然として日中双方がいがみ合っているというのは、
人為的に作られたとても不自然な状況でしょう。
侵華日軍第731部隊遺跡では、
日本に対する敵意を高揚させるような情報も
無くはないのですが、
来場者の私を日本人だと知りつつも、
若い館員の人々は笑顔で対応してくれました。
逆に、日本人来場者の方が
過度に気を使ってしまうような内容もありますが、
多くの反日的な情報を見慣れてきた中国人にとっては、
「反日・抗日」は生活の一部にある陳腐な情報であり、
生身の日本人に対する意識は、
反日デモなどに参加していたごく一部の中国人とは
かなり異質なものなのかもしれません。
中国を侵略した日本は嫌いだけれども、
日本の文化・経済には憧れを持っている。
こうした若い世代の中国人たちに対して、
我々は「今日の日本のリアルな姿」を
しっかりと伝える努力をしていきたいものですね。
それでも日本が嫌われるのであれば、
日中は相容れないものなのだと
諦めがつくというものです。
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